この土地を離れて、もう２０年近くなる。ここを後にするときは、もう二度と戻らないと逃げるように去ったのだった。それが、昨年は私用で訪れたが、今年は仕事も絡んで来ることとなった。路面電車の走る街。
駅前の雰囲気もすっきりとし、それでも昔と多くは変わっておらず、懐かしい思いが込み上げてきた。
昨日、今日の日程を終えて、今夜は昔の馴染みの店に行った。ここのオヤジももういい年だ。来年はやってないかもしれないというが、また顔を出すから、元気でいて欲しいとお願いした。
今夜の食事は、天津飯に肉団子、レバニラ炒め…それに餃子。
その昔、両親が共働きだったため、週に２～３回は、ここで夕飯を食べた。５人家族のはみ出しっ子の自分は、いつも座卓ではなく、カウンターに腰かけて、オヤジの調理の様子を見ては、料理することを学んだ。今夜も昔と変わらない同じカウンター席で食事をした。
オヤジとビールを酌み交わしつつ、昔話をしながら食べた。
…ちょっと食べ過ぎた。そして、随分とまけて貰った。
―こんなにまけて貰ったら悪いよ。商売にならないじゃん。
―いいんだよ。息子が帰ってきたようなものだから。
それに、むかしは十数年にわたって贔屓にしてもらったんだから。
オヤジに感謝して外に出た。
…ちんちん電車に乗って行こう。
ほろ酔い気分で路面電車に乗ってみると、乗客の訛りが懐かしいのと可笑しいのとで、一人でくすくす笑ってしまった。
「次は、豊橋公園前。豊橋公園前…」。
アナウンスに降車ボタンを押し、電車を降りると、国道１号線を渡り、公園に向かった。バカをやってた頃の思い出の多い公園だ。
つづく
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