個人的には、限定的な集団的自衛権の行使は容認すべきであり、そのことも含めて憲法は改正すべきと考えています。今回の安保法制は、過程に問題はありますが、少なくとも、これらを戦争法案と呼ぶつもりもありません。このようなことは立場的に書かない方がよいかと思っていましたが、以下の産経新聞の記事もあり、少し意見を述べてみます。もちろん、個人的な意見であり、弁護士会の意見ではありません。
「戦争法廃案」デモ、弁護士会の〝政治活動〟に内部から反旗? 「戦争しないための法案」「政治的中立守れ」 訴訟にも発展
この記事の中で少し間違っているのは、「声明などは常議員会で決議しており、弁護士会の意思決定として問題ない」という点です。弁護士会の意見書は、常議員会で決議していますが、会長声明は決議していません。以前のブログで書いたとおり、会長声明は、「これまでの弁護士会の意見を踏襲したような内容か急を要する場合」に常議員会を通さずに出されます。
安保法制関連についての弁護士会のデモや会長声明について、会員弁護士から、「何で勝手なことをするのか。」、「自分はこんな声明に賛成していない。」などという声をよく聞きます。このように高度に政治的な問題について、会員間で意見の違いがあるのは当然であり、強制加入団体である弁護士会としても、安保法制に賛成している会員に対する配慮も必要だと思います。
多くの憲法学者がいうように、「憲法改正手続きを経ずに、集団的自衛権の行使を容認することは憲法違反」という考えは、法律家である弁護士の多くも賛同するかもしれません。しかし、「安保法制=戦争法案」という意見が弁護士の中で多数とは限りません。反対運動をするためには、「安保法制=戦争法案」という言い方がやりやすいのは分かりますが、これによって議論が矮小化されてしまっていることが残念です。
日本がもう一度、戦争すべきと考えるような人はいないでしょう。戦争をしないために、平和を守るために、現在の国際情勢を踏まえてどのような手段が適切なのかという観点から、法案の中身を細かく検討して、議論することの方が有意義ではないかと思います。