なぜ、鉄分の補充は必要なの??? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 このシリーズもそろそろ終わりに近づいてきました。そこで、片頭痛がなぜ、女性に多いのかを思い出してもらうことと、片頭痛という病気の基本を再確認する意味で、繰り返しになりますが、もう一度述べておくことに致します。
 以前にも取り上げましたが、とくに女性の片頭痛の場合には重要ですので、もう一度・・・・


鉄分不足の貧血が片頭痛を引き起こす!?

 鉄の体内で以下のような様々な重要な役割を果たしています。


1.鉄が赤血球の重要な構成要素として酸素の運搬に関わっています

 全身の細胞へ酸素を運び、蓄えます。


   ・酸素の運搬 : 赤血球のヘモグロビン
   ・酸素の備蓄 : 筋肉細胞のミオグロビン


2.エネルギーを生み出す


 ミトコンドリアでATPを産生します。ATPは細胞の中にあるミトコンドリアで作られます。そして、ミトコンドリアの中には鉄が保存されています。
 たとえば、過度なダイエットなどで鉄分が不足すると、ミトコンドリアに蓄えられていた鉄が使われて減っていきます。
 鉄が減ればATPを十分に作れなくなるので、体温を維持することができず、冷え症が起こってくるのです。鉄不足がもっと進むと貧血になりますが、冷え症はその前に起こる現象です。

 グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→クエン酸回路→電子伝達系

 この経路でグルコースは完全燃焼できます。
 乳酸を溜めないためにはピルビン酸→アセチルCoAの補酵素であるB1,ナイアシンが重要です。
 しかし、この代謝が完結するためには鉄が十分量あることが前提条件になります。
 電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須なのです。

 鉄不足→電子伝達系の機能低下→クエン酸回路が回らない→アセチルCoAが余る→ピルビン酸が余る→乳酸蓄積

 すなわち、鉄不足があると、ATP不足と乳酸蓄積を生じます。

 鉄不足の人が糖質制限をしても、脂肪酸→アセチルCoA→クエン酸回路→電子伝達系、の代謝がスムーズに行かないため、効果が出にくいのです。ですから鉄を増やさないと話にならないということです。
ミトコンドリアはチトクローム系酵素「ヘム酵素」を含みヘム鉄が材料のため、ミトコンドリアの多い臓器は鉄の赤い色をしています。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
 鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。
 さらに、脳細胞のミトコンドリアでエネルギー生産もできなくなり、材料不足でストップしてしまいます。そして、食事などによってやっと鉄分が補給され、血流が増加すると、一気にミトコンドリアの活動が増して、活性酸素を大量に出すという状態になるので、片頭痛の引き金にもなりかねません。


3.活性酸素からカラダを守る


 抗酸化酵素(カタラーゼ・SOD)の補因子として働きます。
カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシターゼなどの抗酸化酵素の構成要素となって活性酸素の消去に関わっています。


4.コラーゲンの合成を助ける


 酵素シトクロムP450は鉄を補因子として、ビタミンCを補酵素としてコラーゲン特有のアミノ酸 (ヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジン)を合成します。


5.有害物質の排泄を助ける


 肝臓に多い水酸化酵素シトクロムP450の補因子として、水に溶けやすく排泄されやすい形に換えます。
 ミトコンドリア内でシトクローム酵素の構成成分としてATPの合成に重要な働きを負っています。


6.神経伝達物質(脳内セロトニン)の生産に関わっている

 鉄分が不足すると、ヘモグロビンが十分に作られないので、貧血が起こります。貧血が起こると、脳内にも酸素や栄養素がしっかりと届かなくなるため、十分なセロトニンを合成することもできなくなります。
 セロトニンは、片頭痛を抑えたり、片頭痛の大元のストレスを抑えて体に負担がかからないようにしてくれる重要なものです。
 鉄分は実はセロトニンなどの神経伝達物質を作るときの酵素を助ける「補酵素」として機能しているため、鉄分が十分潤っている体内ではセロトニンがスムーズに作られますが、鉄分不足だと、セロトニンの生成自体が出来なくなるわけです。
 つまり、セロトニンの合成には、トリプトファンとビタミンB6とマグネシウムとナイアシンが必要!であり、実は「鉄分」も必要なのです。
トリプトファンというアミノ酸からセロトニンができる過程で、チロシンというアミノ酸からドーパミンができる過程で、鉄が必要になってくるのです。


 以上、一つの細胞は、10~数百個のミトコンドリアを持ちます。ミトコンドリアはチトクローム系酵素「ヘム酵素」を含みヘム鉄が材料のため、ミトコンドリアの多い臓器は鉄の赤い色をしています。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
 鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。
 体温が1度低下すると、代謝は14%も低下するとも云われています。十分なヘム鉄の補給が必要です。
 このように、片頭痛持ちの人は、鉄欠乏性貧血になると頭痛が増え、頭痛の強度が増強してきます。


鉄不足はエネルギー不足と心得ましょう


 鉄については新しい認識として「鉄不足=貧血」ではなく、「鉄不足=エネルギー不足」だと思ってください。というのも鉄はエネルギーを作り出すうえで欠かせない成分なので、鉄が不足するとエネルギー不足になります。
 その結果、元気もでませんし、疲れやすいし、体温も上がらないので冷え症にもなりやすくなります。体のすべての機能が低下してしまうのです。
 鉄不足の影響が身体のどこにでるか、どういった症状であらわれるかは人それぞれなのですが、いわゆる女性特有のトラブルといわれるものの背景には鉄不足が関わっているケースが多いということは覚えておくといいと思います。
 実際に、不正出血だったり、便秘が鉄を摂取したところ改善したというケースもあるのです。この例は筋肉を収縮させる働きもする鉄分を補ったことで、子宮の筋肉がきちんと収縮するようになったこと、腸の蠕動運動が正常化したと考えられます。
 そいうことで、今現在、カラダの調子がいまいちすぐれないとか、年齢のせいかな?と思う衰えを感じているようならまずは鉄を補給するようにしてみてください。病院にいくのはそれからでもいいと思います。


鉄欠乏性貧血とは?


 貧血にはいくつかの種類がありますが、女性に多いのは、体内の鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血です。鉄分の摂取不足、鉄の吸収が悪い、出血により鉄の補給量より排出量が多い、などが主な原因です。
 女性は月経の出血により鉄分が少しずつ失われていくことで鉄欠乏性貧血になる人が多く、20代、30代、40代と年齢が高くなるにつれて貧血の人が増える傾向にあります。40代になると女性の約3割が貧血になっています。


 体内で鉄が減少すると、貯蔵鉄であるフェリチンが使われ減っていきます。フェリチンが不足すると血液中の鉄分も徐々に不足し、最後にヘモグロビンが減少し貧血が起こります。治療では、体内に貯蔵鉄がどのくらいあるかを調べることがポイントになります。
 症状 動悸、息切れ、疲労感、めまい、頭痛、顔面蒼白、むくみ、氷がガリガリ食べたくなる、爪がもろくなるなど症状は多彩です。
 貯蔵鉄のフェリチン、理想値は100~300 で、男性の99.9%はフェリチン100以上です。 50歳以上の女性の80%はフェリチン100以上です。
 しかし、15~50歳女性の80%はフェリチン30以下の鉄不足で、40%はフェリチン10以下の深刻な鉄不足です。
 鉄不足だと電子伝達系の機能が低下し、十分なATPが産生できません。このため 鉄不足の人はどんなに暑くても汗をかけません。


カフェインの作用として


 カフェインは鉄分の吸収を阻害しますので、貧血気味の女性、貧血の人は、せっかく他で鉄分を補ってもカフェインのせいで鉄分吸収がうまく行われないことがあります。
 その他にも体から亜鉛、カリウム、カルシウムなどのミネラル、ビタミンCやB群を奪うことが知られており、このためエネルギー代謝を始め、多くの代謝に支障がでます。
 またカフェインの過剰摂取(1日300mg以上)はホルモンバランスを崩しますので、こちらも様々な影響を及ぼします。
 コーラ類や紅茶にはインスタント・コーヒーと同じくらいカフェインが含まれていますし、緑茶、ココア、チョコレートなどにも含まれます。市販薬に多量のカフェインが含まれているケースもあります。
 知らず知らずのうちに、自分が思っている以上にカフェインを摂ってしまう状況があります。有効な部分ももちろんあるのですが、摂りすぎには注意した方がいい成分、ということです。
 そのいい例が、カフェインは頭痛を抑える働きがあるのですが、飲みすぎると逆に頭痛を引き起こす、という作用です。
 うまく摂り入れるといいのですが、過剰になると毒となります。注意したいものです。
 何でもそうですが、偏った摂り方にいいことはありません。


片頭痛とカフェイン摂取と鉄補充の有用性


 カフェイン摂取制限と採血にて貧血を指摘された片頭痛患者さんに対し積極的にカフェイン摂取制限を行いさらに鉄欠乏性貧血に対し治療を行った際に症状の軽減がみられます。 (済生会松山病院 脳神経外科・神経内科 日本頭痛学会総会 2010)


 鉄が大事だと思えば普段から食事の中で症状が出てない人でもなるべく鉄を摂るようにしていきましょうという風に考えて頂きたいと思います。その時の鉄、食べ物で言えばやっぱりレバーとかです、それからお肉の赤身です、レバー嫌いな人はお肉の赤身でいいですからそれをしっかり摂ってください。そしてあのひじきなんかも入ってるんですけど、もう本当少ないのでひじきだけで鉄をまかなうのはかなり難しいです。それから小松菜、ほうれん草に至っては鉄分が非常に少ない、昔とはもう違いますのでこれで摂るのもかなり厳しいです。バケツ1杯とか2杯とかのほうれん草を食べると賄えるかもしれませんがちょっと考えただけでも食べたくないです。それよりはお肉の赤身ということになってきます。



 片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。
 女性は月経の出血により鉄分が少しずつ失われていくことで鉄欠乏性貧血になる人が多く、20代、30代、40代と年齢が高くなるにつれて貧血の人が増える傾向にあります。
 鉄不足だとミトコンドリアにおける電子伝達系の機能が低下し、十分なATPが産生できません。このため、片頭痛を増悪させることになります。
 以上のように、鉄の不足は、ミトコンドリアの機能障害をさらに悪化させ、脳内セロトニンの産生を抑制させ、有害物質が蓄積し、抗酸化物質が作られなくなってきます。
 片頭痛が女性に多い理由のひとつにもなっていることを忘れてはなりません。
 片頭痛の基本は、ミトコンドリアとセロトニン神経系にあります。