ストレスはなぜよくないの??? | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

生体リズムと規則正しい生活


 幼い頃から、「規則正しい生活を送りましょう」と何度も聞いた言葉ではないでしょうか?
 昔から、片頭痛の生活指導として「”規則正しい生活を行って”、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、ストレスをためないようにと言われてきました。
 規則正しい生活とは、生まれつき体に備わっている生体リズムに沿った生活という意味で、最も自然で健康的な生活と言えます。
 体の生体リズムを乱す生活は、健康を維持のメカニズムである体の仕組みを無視した生活をしていることになります。
 生活のリズムは恒常性(ホメオスターシス)によって維持されています。


生体リズムと体内時計


 生体リズムや体内時計という言葉が一般に使用されるようになってきました。
 最近の研究から、体内時計は体中にあることが知られています。その中で全体の体内時計を司っているのが脳の視交叉上核にある体内時計です。
 体内時計を元に、身体のなかでは様々なリズム、つまり生体リズムが刻まれています。睡眠と覚醒のリズム、体温のリズム、行動のリズム、ホルモン分泌のリズムなどです。
 体内時計は、人により24~25時間の周期で刻まれていると言われています。周期が24時間より長い方の場合、一日24時間のリズムとズレが生じますので、概日リズム睡眠障害になりやすいと言われています。また、海外旅行の際に体験する時差ぼけは、日本時間の体内リズムがいきなり時差のある海外に移動して生体リズム全体が狂った状況と言えます。
 睡眠と覚醒のリズムは、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌と深く関連しています。メラトニンとは、日中に光を浴びることで作られ、夜になって暗くなると分泌を始めます。朝強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、夜暗くなると再び自然にメラトニンが分泌されて眠気を促し睡眠と覚醒のリズムがつくられます。メラトニンは脳内セロトニンと相互に関係があります。

適切な睡眠時間は人により異なる

 適切な睡眠時間、あるは、気持ちの良い睡眠時間というのは、人によって大きく異なります。同じ人間なのに、倍半分以上も異なることがあるのは不思議にさえ思えます。また、書籍には、3時間睡眠...を唱ったものがあるほど、短時間睡眠の方がおられるをみると驚くばかりです。
 昔は、一日の睡眠時間は8時間と言われたものですが、現代人の睡眠時間の平均は、子供や老人を除けば7時間を切っており、年々短くなっているようです。短くなっても、睡眠の質を確保していれば問題ないと思いますが、生活のしわ寄せで睡眠時間が短くなっているようでは、健康的な生活を送ることは出来ません。

 このように、生体リズムを保つには睡眠が極めて重要になっています。
 睡眠不足は、”生活のリズムを乱す根源”にもなってきます。


 また、現代の生活環境は、健康的な生活を崩す要因が多く、24時間営業の飲食店や夜通しの娯楽、コンビニやテレビ・パソコンなどの普及により急激に変化しています。このような変化により、体の生体リズムにも悪影響が及んでいます。
 生体リズムを無視した不規則な生活を送ると、様々な不調を感じるようになります。生体リズム、自律神経、ホルモンはすべて連携しているため、生体リズムが乱れると自律神経やホルモンバランスにも悪影響が及んで「ホメオスタシス機能」を乱すのです。


ホメオスタシスって何?


 ホメオスタシスとは19世紀にベルナールによって見いだされ、20世紀に入ってハーバード大学教授、ウォルター・B・キャノンによって、「ホメオスタシス」と命名された法則です。
 簡単には、人体は温度が高くなると身体の表面に近い部分の血管をひらいて体内に発生する熱を発散し、更には汗を出して気化熱で温度調節をします。
 また、逆に寒いときには血管を収縮させて熱の発散を防ぎます。
 同じように、酸、血圧、血糖、電解質、エネルギー、ホルモン、酸素、蛋白質、など生存に不可欠の要素に対しても、体内、体外の変化に反応して調節機能が働き、正常値を保とうとします。
 このようにホメオスタシスとは、外部の環境変化に対して、自ら体内の内部環境を、生存に適すように調節することを言います。即ち身体の恒常性を維持することです。


ホメオスタシスの三角形
 
 基本的な生命の維持活動は、次の3つの機能によって支えられ、恒常性が維持されています。ホメオスタシスの三角形として表される三つの機能は、どれ一つが欠けても健康バランスは 保たれず、生命の維持は断たれてしまいます。
 片頭痛とは端的に表現すれば健康バランスが乱された状態ともいえる頭痛です。


◆自律神経系


 交感神経と副交感神経の働きによって、呼吸、血液の循環、その他 各種臓器の活動をコントロールをします。


◆内分泌系(ホルモン系)


 各種ホルモンの分泌によって身体のバランス調整をします。血糖値を調節したり、ミネラル量や養分量を調節したり、必須栄養素の体内合成や排泄を即したりし、身体バランスをコントロールします。


◆免疫系


 ウイルスや細菌、有害物質と戦う身体の防御システムです。更には、脳と密接に情報交換して、健康維持をコントロールします。


 ①自律神経系②ホルモン系(内分泌系)③免疫系の三つは、独立して機能するのではなく、お互いに連携して調整しあいながら、体内環境を整え、恒常性を保つ働きをしています。
 即ちホメオスタシスとは、本来人間の身体が生まれつき持っている、病気や障害を自身の力で元の健康体に戻そうとする、身体の制御の働きを意味します。
 いわゆる”自然治癒力”、とはこれらが正常に保たれた状態のことです。


ストレスと疾病


 ストレスを感じれば誰でも、これまで述べたような反応を起こします。この反応は、生体として自然な反応で、病気の症状でも病気でもありません。しかし、このストレス反応が、長期間持続したり、ストレスレベルが高すぎる状態になったりすると、様々な障害や疾病に発展していく可能性が強まります。


ストレス反応のプロセス


 ストレスには次の3つの反応プロセスがあります。


  1.警告期
  2.抵抗期
  3.疲憊期


 1の警告期は、ストレッサーに直面し、身体にショックを受けている時期です。自律神経系のシステムが活性化され、一般的には、肩こりがひどい、消化不良という程度の症状が出てきます。
 2の抵抗期になると、ストレッサーに対する抵抗力が増して、一時期ですが、一見バランスの取れた安定した状態になります。しかし、この時期に入ると、回復が遅くなり、朝起きてもさわやかでない、体が重いといった状態になり、免疫や活力の低下も見られます。
 2の時期までに、適当な休養やストレスのマネジメントがないと3の疲憊期を迎えてしまいます。この段階では、いよいよ、抵抗力が下がり、心身に様々な症状をもたらします。 例えば、慢性頭痛、胃・十二指腸潰瘍、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、神経症などのストレス障害が起こります。
 疲憊期を迎えてしまう前に、警告期に現れるストレスサインに気づき、そのときのストレスレベルを知っておくことが大切です。


慢性頭痛は「生体のリズムの乱れ・歪み」によるものです


 「脳の中に異常のない頭痛」の一次性頭痛(慢性頭痛)は、「生体のリズムの乱れ・歪み」から生じてきます。生活のリズムは恒常性(ホメオスターシス)によって維持されています。恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっております。
 自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。

 ストレスは、このホメオスターシス三角そのものの釣り合いを乱す根源ともなり、この3つを構成する個々それぞれを弱体化させる原因ともなり、慢性頭痛を悪化させます。


 ”セロトニン神経系”の機能低下により「脳内セロトニンの低下」が引き起こされ、これは生活習慣の不規則・ストレス・生理周期により低下・変動し、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると低下してくることになります。
 ”生理活性物質”は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスがよくないと、 局所ホルモン(エイコサノイド)(プロスタグランジン)のバランスを乱すことになります。結果的に、細胞機能のバランスを欠くことになります。
 ”腸内環境”は、欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。
 また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。 家畜に投与された抗生物質が食肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を弱らせるようなこともあります。
 ”腸内環境”は「片頭痛体質形成」には極めて重要な位置を占めております。


 このように、ホメオスターシスには食生活の関与が如何に大きいかが理解されます。


緊張型頭痛と片頭痛は一連のもの?


 緊張型頭痛は、環境因子の色彩の濃い頭痛です。この発症には、身体的ストレスと精神的ストレスが関与します。身体的ストレスには「体の歪み(ストレートネック)」が関与してきます。精神的ストレスには、「脳内セロトニンの低下」が関与します。

 緊張型頭痛では、デスクワーク、特にパソコンを使って仕事をすることにより、うつむき姿勢を長時間とると、首の後ろ側の頭半棘筋が緊張し、その筋肉を貫くように走っている「大後頭神経」が圧迫され頭痛が起こり、緊張型頭痛は明らかに首疲労からもたらされる病気で、”首疲労”を治療することによって、痛みがきれいに消えてしまいます。
 ところが、明らかに片頭痛と考えられる予兆や前兆を持っていて、片頭痛に有効なイミグランなどのトリプタン製剤を飲んだら、頭痛がぴたりと止まることから、典型的な片頭痛と他院で診断された患者さんに対して、頸筋の異常を治療したら、片頭痛が起きなくなるものが、片頭痛の一部に存在します。こうなると、片頭痛と緊張型頭痛という分類自体が怪しくなってきます。このように東京脳神経センターの松井孝嘉先生は指摘されます。
 頭半棘筋にこりが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経は、頭痛をもたらす神経です。大後頭神経と三叉神経は脳のなかで繋がっていますので、大後頭神経の刺激は、三叉神経にも伝わります。
 大後頭神経と三叉神経が同時に痛くなる現象は、よく知られています。これが、片頭痛を誘発・増悪・慢性化に関連しています。
 要するに、緊張型頭痛も片頭痛も一連の連続したものであるということです。


 片頭痛は、「ミトコンドリアの機能障害」による頭痛であり、その大半は、遺伝形式は”多因子遺伝”によるものであり、遺伝素因を基盤として、これに”環境因子”が加わって発症してくるものです。
 緊張型頭痛も片頭痛も一連のものであり、緊張型頭痛が慢性頭痛の発症の起点となるもので、緊張型頭痛に環境因子として”ミトコンドリア”、”脳内セロトニン”、”体の歪み(ストレートネック)”の3つが付け加わることによって片頭痛にまで進展していきます。

 さらに、この根底にはホメオスターシスの乱れ(免疫・・腸内環境の悪化)や脂肪酸摂取の問題による生理活性物質のアンバランスが基盤・根底に存在します。


 こういったことが、慢性頭痛を理解するための基本となるものです。


慢性頭痛の生涯経過


 緊張型頭痛は、ごくありふれた取るに足らないものとされます。片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。

 緊張型頭痛と片頭痛が連続したものであり、緊張型頭痛→片頭痛→慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)へと移行してくるものと考えますと、緊張型頭痛は、専門医に言わせると取るに足らない頭痛ということから東洋医学でいう”健康”の段階に位置するものであり、片頭痛は東洋医学でいう”未病”に相当し、”慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)”に至って、初めて”病気”としての頭痛となるということです。
 このことは即ち、自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものと思われます。
 恒常性(ホメオスターシス)には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、それはストレスなどに大きく影響されます。
 こうした、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角形」と呼ばれます。
 そして、この3つがバランスをとりながら相互に作用しています。
 このなかの、”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態が持続することになります。東洋医学でいう”未病”ということです。
 そして、ミトコンドリアの問題、脳内セロトニンの低下、さらに体の歪み(ストレートネック)等々の”慢性化の要因”が加わることによって「ホメオスターシスの三角形」が”崩れる”ことによって、2~3割の方々が慢性化に至るということを意味しています。 ここでやっと”病気”になります。このような段階に至れば、もはや改善は至難の業となってくることになります。このため、早期に対策を講ずる必要があります。


 東洋医学でいう「未病」を病気に進みつつある状態と捉えますと、はやい段階で「未病」のサインを認識し、しかるべき手を打てばその進行を抑え、本格的な病気に移行することを防ぐことができます。
 中国最古の医学書「黄帝内経」の中において「未病を治す」という表現がありますが、未病は病気ではないのに、「治す」というのはどういうことなのでしょうか。
 これは、健康であろうと病気であろうと、つねに自らの生活習慣に気を配り、より本来の姿に近い心身の状況にもっていこうとする、生き方の姿勢をあらわしている表現なのです。この人間本来の姿を、東洋医学(漢方)の世界では「中庸」と呼んでいますが、これはすなわち、健康と病気のまん中あたりのことを意味しています。
 つまり、健康すぎても、また病気だらけでも、いけない。
 からだの状態とは、どちらか一方向への偏りがないのが一番よいのだ、ということを意味しているのです。
 こういうことから未病の段階にある「片頭痛」で治さなくてはなりません。

 このように段階を踏まえて”慢性頭痛”には対処しなくてはならないということです。


ストレスによる影響


 「ホメオスターシスの三角形」は、ストレスにさらされることでバランスを崩し、頭痛に繋がっていくことになります。慢性頭痛は、ストレスの影響が極めて大きいのが特徴です。


(1)ストレスと脳内セロトニン


 ストレスを受けると、脳にある視床下部がそれを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋の青斑核にあるノルアドレナリン神経からはノルアドレナリンが、交換神経末端からはアドレナリンが分泌されます。
 さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏となり、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が高まります。セロトニンは過剰に分泌されたこれらのホルモンを抑制して、自律神経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌されます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌にブレーキをかけます。
 脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃体」があります。扁桃体の刺激は視床下部という場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分はセロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリンが放出され交感神経の働きを強めます。
 嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。


 このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
 副腎皮質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
 副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことになります。
 このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセロトニン不足を招きます。
 縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシナプス接続して、痛みを抑制します。


 以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニン不足」を来すことによって、痛みを制御ができなくなって、頭痛を感じやすくなります。


(2)ストレスとマグネシウム


 通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
 アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
 こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏に陥ります。
 ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが消耗されると言います。また副腎(ストレス調整臓器)は、コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリンを作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似た作用を示し、同じくマグネシウム不足を生じさせます。
 またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を生みますが、体内のマグネシウムレベルが低い時にストレスにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されてしまうのです。
 アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の爆発などを作り出すので、まさに悪循環の流れが出来上がるわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、マグネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
 またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要とされますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいます。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。

 ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネシウムの排泄量が増えています。
 これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌されるときにマグネシウムが消耗されたためです。
強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ、益々ストレス状態が悪化するという悪循環に陥ります。


マグネシウムはストレスによって奪われます。


 ストレスにより起こる現象で、例えば甘いものを食べることも体にとってはストレスになります。


甘いもの=ストレス


 ちょっと結びつかないないかもしれませんので、どういうことか説明します。
 まず、甘いものや小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えるためにインシュリンが分泌され、今度は血糖値が大幅に下がります。すると、今度は血糖値を上げるために副腎からアドレナリンが放出されます。人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意されています。
 血糖値が約65-70mg/dLに低下すると、 血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始めます。
 血糖値が約60-65mg/dLに低下すると、 三番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出されます。
 最後に血糖値が60mg/dLをきるようになると、 最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進します。
 血糖値を上げるために分泌されるホルモンの順番は、①グルカゴン、アドレナリン②成長ホルモン③コルチゾール です。
 血糖値を上げるためのアドレナリンは、他にも心臓のポンプ機能を速めたり、筋肉を活性化させたりします。アドレナリンは闘争反応、逃避反応を刺激します。
 すると、マグネシウムはアドレナリンによって緊張状態になった筋肉や臓器を弛緩させるために消費されます。
 このため、アドレナリン由来のこういった機能亢進にはすべてマグネシウムが必要になり、消費されます。
 「ストレス⇒アドレナリン放出⇒マグネシウム消費」という流れがあるわけです。


 ストレスによりもたらされたマグネシウム不足は、片頭痛の場合、脳過敏を来たし、頭痛を悪化させます。


(3)ストレスと活性酸素


ストレスがたまると活性酸素が増える


 活性酸素を増やす要因には、食生活の乱れやタバコや大量の飲酒、過激なスポーツ、紫外線など、さまざまな要因があります。しかしそれだけではなく、ストレスも重要な要因のひとつです。代表的なメカニズムには、次のようなものがあります。


1.ストレスを受けると、ストレスに対抗する「副腎皮質ホルモン」が分泌される。この分泌と分解の過程で、活性酸素が発生します。
2.ストレスは、「抗酸化ビタミン」ともいわれるビタミンCを大量に消費します。
3.緊張が続くと血管が収縮し、一時的に血流が阻害されます。その後、血管が拡張したときに、血液が勢いよく流れますと、大量の活性酸素が発生します。
4.ストレスがあると高血糖になりやすい。この状態も、活性酸素が増える一因となります。


 イヤな仕事や勉強、人間関係などのストレスも、体内で活性酸素がドッと増えます。よく、ストレスから胃潰瘍、十二指腸潰瘍になった、とききますがこれも活性酸素が犯人です。ストレスにより血管が強く収縮し血流障害がおき、虚血状態に陥った後、血流が再開する時大量の活性酸素がドッと洪水のように発生するのです。

 ストレスホルモンの一種であるコルチゾルが免疫機能の重要な役割をになうNK細胞の機能を停止させ、生成時に活性酸素も発生させます。

 ストレスが体にダメージを与える理由は、体内のあらゆる栄養素が消耗し、瞬間的に血管が収縮して血行が悪くなります。この血流が再開されるときにドッと大量の活性酸素が発生するのです。
 体内のあらゆる栄養素が血液中に動員され、筋肉や副腎といったストレスとの闘いで活躍する組織に優先的に送られるのです。その一方、そのほかの組織は逆に栄養を絞りとられる結果となります。ストレスに対処するのに直接関係しない臓器(消化器や皮膚など)に送られる血液量が最小限に絞られます。
 ストレスが解消されると、これらの臓器にも血液が戻ってきます。このときにも、活性酸素が大量に発生すると考えられています。現在のように繰り返しじわじわとストレスが続く状況では、体にとって大きな負担となります。例えば、ストレスがかかると心拍数や血圧が上がるのは、身に迫る危険に対抗するために自律神経により様々な臓器が調整された結果です。身に迫る危険に対抗するための、体の仕組みになっています。


慢性頭痛とストレスはどう関与するのでしょうか


(1)緊張型頭痛の場合は・・


 精神的なストレスと、身体的なストレスの両方で起こります。
 緊張型頭痛は、筋肉や精神の緊張をうまく解消できない人に起こりやすいのです。


・「身体的なストレス」


 前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣などによる筋肉へのストレスにより、頸や頭の周りを取り巻く筋肉が収縮して凝り固まる結果重圧感を生じます。
 ストレートネックを生み出す最大の原因は、前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣にあります。原因の99% は、ここから来ていると言っていいでしょう。
 パソコンの画面に釘付けになっている時間がとても長くありませんか?パソコンを使っていなくても、デスクワークをしていたり、携帯電話・スマホやゲームの画面を見ていたり、座って本を読んでいたり、車を運転したり・・・。1日のほとんどの時間を前かがみやうつむきで過ごしているという人も少なくないのではないでしょうか。そういう毎日の生活習慣が、ストレートネックをつくる”大もと”になっているのです。

 人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下の背骨にかかることにより、すぐに下の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないようにS状の湾曲を呈しています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが「ストレートネック」になって、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜しておれば、後頸部の筋肉に張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、このこりが上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。


・「精神的なストレス」


 ストレス、不安、抑鬱などが長時間続くと、「精神的なストレス」がたまります。
 すると神経や筋肉の緊張が高まり、痛みに敏感となり、頭痛が起こります。
 これは先程述べたことですが、嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。

 ストレスが持続すれば、慢性的な”脳内セロトニンの低下”を引き起こし、これが頭痛の原因になります。


(2)片頭痛では


 片頭痛では、前屈みの姿勢を強いられることによる身体的なストレスから「体の歪み(ストレートネック)」を併発し、まず緊張型頭痛をスタートに、生まれつき「ミトコンドリアの働きの悪い」ところへ、ストレスが持続することによりマグネシウム不足を起こしてきます。さらにストレスが持続することにより「脳内セロトニンの低下」が追加され、頭痛を悪化させ、片頭痛へと移行してくることになります。


 このように、ストレスは、ホメオスターシスの乱れを引き起こし、ミトコンドリアの働きを悪化させ、さらにセロトニン神経系の働きまで悪くさせてきます。
 そして、ストレスにより活性酸素が産生されることによって、片頭痛発作そのものの引き金ともなってくることになります。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
 その”環境因子”として、以下の6項目があります。

  1.ホメオスターシスの三角そのものを歪める根源
  2.免疫(腸内環境)の関与・・腸内環境を悪化させる
  3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題 内分泌そのものへ影響
  4.体の歪み(ストレートネック)の関与・・身体的ストレスになる
  5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニンの低下を招く
  6.ミトコンドリアの関与・・マグネシウムの不足を招く

 このようにストレスは環境因子5つに悪影響を及ぼすことになります。


 こういったことから、慢性頭痛を改善させるためには、ストレス対策がいかに重要であるかが理解されたと思います。