”寝過ぎ”がなぜよくないのでしょうか | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

寝過ぎは禁物? 睡眠時間と寿命の関係


 そもそも”何のために睡眠が必要”なのでしょうか。それは、活性酸素等で傷ついた組織の修復は寝ている間に行われるため修復には睡眠は不可欠です。もし傷が大きければそれだけ長い睡眠が必要になります。
 そうなのです、必要とされる睡眠時間は状況によって大きく変わるのです。例えば1日中テレビを見たり本を読んで過ごした日は6時間の睡眠でいいかもしれませんが、殴り合いのケンカで死にそうになった日は15時間でも足りないかもしれません。
 起きている間の活動で細胞が傷つき、寝ている間にそれを修復します。しかし前述したように完全には修復できないため徐々に傷が蓄積し、それが致命的な状態にまで達したときお迎えが来るわけです。つまり起きている間にできる傷が大きいほど睡眠時間は長くなって寿命は縮むのです。
 それでは傷をつける原因は何でしょうか。それは生活習慣に問題があったり過大なストレスにさらされていることが考えられます。睡眠時間が長いと感じる人は生活習慣に問題がないか、ストレスをためていないかよく考えてみてください。それらを改善することで睡眠時間は縮むかもしれません。
 スポーツをやっている人も多くの酸素を消費するため睡眠時間が長い傾向にあります。
 スポーツマンに早死にする人が多いのもこれと関係があるようです。
 つい先日は大相撲の元大関の貴ノ浪関が43歳の若さで亡くなられました。
 このように、生活習慣に問題があるとか、ストレスをためているために、結果的に、睡眠時間が長くなって、早死にするということのようです。


それでは、片頭痛の場合は


 片頭痛の場合、とくに子供の場合、片頭痛の発作を起こした際に、一眠りした後に頭痛が軽快することはよく経験されます。これは、寝ている間に、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアが修復されることによって、頭痛が軽快したものと思われます。
 大人の場合、生活習慣に問題があるとか、ストレスをためているために活性酸素等で傷ついたミトコンドリアを修復させるために、自然と睡眠時間が長くなりますが、過大なストレスにさらされている状態が持続しておれば、傷ついたミトコンドリアは、長時間睡眠をとったにも関わらず、完全には修復されないため、頭痛が起きやすい条件が残ることになり、朝食を抜いて寝ておれば、低血糖・脱水などの要因が加わり起床後に頭痛に見舞われることになります。
 こうしたことから、寝過ぎによる片頭痛発作をなくすためには、日頃から「生活習慣の問題点を是正」し、「ストレスをためないための対策」が必要となってきます。


 こうしたことから、寝不足は論外ということになります。


エネルギーの生産には休息が必要です・・睡眠の重要性


 これまで述べてきましたように、生物の細胞の中にはミトコンドリアという細胞小器官があります。
 私たちが食物からとった、炭水化物(糖)や脂肪は代謝されて、ミトコンドリアの中でTCAサイクルに放り込まれて酸素を消費しながら、活動していくのに必要なエネルギーに変えられています。
 糖にはTCAサイクル以外に、酸素を使わずミトコンドリア以外の場所でエネルギーを生産するシステム(解糖系)もあります。
 この場合は乳酸ができますので、激しい運動(無酸素運動)をした時などは、筋肉内に大量の乳酸がたまることになります。
 しかし、このエネルギーの作り方では効率が良くないので、解糖系で分解した糖も、酸素が十分にある場合は、途中からミトコンドリアの中でTCAサイクルに渡されて、エネルギーに変えられることになります。
 つまり、ミトコンドリアは体温や生体が活動するエネルギーを生産するにはなくてはならない場所なわけです。
 そして、ミトコンドリアは生体がちゃんと休息をとらないと働けなくなってしまうのです。ですから、ちゃんと睡眠時間を確保することが大切になります。
 地球の重力に逆らって動物が立ったり、座ったり、動いたりするには、相当なエネルギーの消耗があり、眠らなくても重力に逆らわないように横になっているだけでも休息をとっていることになります。
 直立2足歩行は人間に大変な重労働を課しています。
 生物が水の中で暮らしていた頃は水の浮力によって1/6Gの重力しかなかったのが陸にあがって1Gに変わり、なおかつ5キログラムもある頭を150~180センチの高さに保つには相当なエネルギーが必要です。
 血圧を例にとると、4足歩行の45キロ位の大型犬で血圧は90ミリHgほどです。人間は120mmHgなければ160センチの位置にある頭の活動を生き生きと保つことが出来ません。しかし、横になればイヌと同じ血圧90mmHgでも細胞レベルの呼吸は十分維持できます。
 体重を支える骨には大きな負荷がかかります。骨が体重を支えているときはただ柱のようにさせているのではなく、酸素を消費し、骨の中のリン酸を消費しエネルギー使って支えています。ここで重要なのは骨は体を支えるだけではなく造血もしているということです。立っているときは体重を支えることでエネルギーが消費されてしまい、エネルギーが不足して造血したくても出来ません。だから新陳代謝は睡眠中に行われます。1晩で1兆個の細胞がリモデリング(新陳代謝)しています。つまり、睡眠をとらないと新陳代謝というプロセスが行われないということです。


睡眠は脳の疲労を回復する栄養剤


 太古から人類は、日の出とともに狩猟や農耕に精を出し、日が沈むとともに体を休め眠りにつく一日を過ごしていました。睡眠とは、重力に逆らい二本足で昼間活動していた人類が、疲れを取るために横になって眠る時間です。重力の影響は大きいので、横になって体を休め、その影響を解除しないと骨髄の造血機能が働きません。骨休めという言葉の意味でもあります。
 眠っている間は副交感神経が優位になり、成長ホルモンが最も多く分泌され、細胞の成長や修復を行ったり、脂肪を分解させたり、病気をもたらすウィルスなどの体内への侵入防ぐ免疫力も高めたりします。

 また、睡眠は体ばかりでなく、何よりも脳の疲労を回復させてくれます、長い時間運動を続けていると、筋肉に疲労物質がたまって、充分な力が発揮できなくなるように、脳でも同様のことが起こります。脳は働く時間と量に比例して、睡眠促進物質プロスタグランディンやサイトカイン、神経ペプチドなどがたまってきてしまいます。
 睡眠促進物質が増えすぎると脳が壊れてしまうので、睡眠促進物質の生産を止め、これを分解するために、脳の働きを止めて眠る必要があるのです。そのため大脳が疲れてくると自然に眠くなり、眠ることによって脳の疲労を回復して定期的なメンテナンスを行っています。
嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われています。


睡眠中に分泌されるホルモンの役割

 夜、眠りについてから朝起きて活動を始めるまでに、体の中ではさまざまなホルモンが分泌され、大切な働きをしています。

ノンレム睡眠中には、新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞同士の情報伝達の役割をするサイトカインなどが活発に分泌され、病原菌に対する抵抗力が強化されたりします。成長ホルモンは22時頃から活発になり2~3時頃にピークを迎えます。「寝る子は育つというように」、睡眠の深い子ども程たくさん分泌され、子どもの成長に重要なホルモンですが、大人にとっても体の修復に欠かせません。たんぱく質や骨などを合成する働きの促進、疲労回復、リンパ球の働きを活発にさせて傷の修復、お酒を飲んで代謝に使われた肝臓細胞の再生など、細胞を活性化させ、体全体のダメージを回復するホルモンです。

 女性にとってもこの4時間は、お肌のゴールデンタイムといわれ、肌の生まれ変わりが最も活発になり、熟睡によって皮膚の新陳代謝が促進され、肌がみずみずしく、つやつやしていきます。
 レム睡眠中には、生命維持に不可欠なホルモン、コルチゾールが分泌され、睡眠中のエネルギー供給のために脂肪を燃やしたり、肝臓にあるグリコーゲンをブドウ糖に分解して血糖値を高めてすぐに活動できるようにします。
 不規則な就寝時間や浅い睡眠は、ホルモンの分泌時間や量を乱し働きを低下させた体温調節ができなくなります。ホルモンや免疫から考えると、遅くても午前0時には入眠するのが望ましいでしょう。
 それでは、睡眠時間に関して最近一番よく聞くのが、6時間半~7時間半くらい、つまり平均して7時間くらいが良いということです。従って11時頃就寝し、6時頃起床するのが理想的と言われています。この点に関しては、本人にとって適正な時間であれば十分であり、それよりは起床時間と就寝時間を一定にさせることが最も大事な点です。
 適切な睡眠時間は、各人によって異なっていることを理解され、睡眠時間を適正に確保し、起床・就寝時間を一定にすべきです。これが最低限必要とされています。
 とくに、仕事の関係で十分な睡眠時間が確保できない状況においては、最低限、朝の起床時間を一定にする必要があります。
 
 以上、睡眠は、片頭痛治療上、極めて大切であるかが理解して頂けたかと思います。
 しかし、問題は職業柄夜勤だけの場合です。ガードマン、夜警などの方々は、このような考え方では睡眠がとれません。このため、このような方々の慢性頭痛のコントロールには難渋していることは事実です。こうしたことは、睡眠が十分に確保できないとどのようになるかを証明していると言えます。
 経験的に、睡眠時間の問題が解決しなければ、いかなる手段を用いようとも、慢性頭痛を改善させることは不可能といえる程、重要な位置を占めております。
 慢性頭痛に「不眠」があれば、その不眠の原因・背景を探ることを出発点にすることが大切になってきます。ここから、慢性頭痛の発症要因を探る手がかりになることもあります。


 このように睡眠は、ミトコンドリアを元気にさせるために絶対的に必要なものです。


 寝過ぎの弊害については、これまでも記事にしてきました。


  寝過ぎの弊害 その1
    http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11960506953.html
  寝過ぎの弊害 その2
   http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11960532166.html
  睡眠の関与・・寝過ぎは禁物?睡眠時間と寿命の関係
   http://taku1902.jp/sub019.pdf


 以上のように、片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。

 このため、以下のような生活習慣の問題・・


  1.睡眠不足の問題
  2.マグネシウムの問題
  3.有害物質・・活性酸素の問題
  4.薬剤による影響


 が加わることによって、益々、ミトコンドリアの機能は低下することになり、これを修復させるためには、長時間の睡眠を必要とすることになります。ここにさらにストレスが加われば、さらに機能低下が進むことになり、長時間の睡眠をとっても、傷ついたミトコンドリアの完全に修復されないことから、覚醒後も低血糖・脱水などの影響から頭痛が出現してくることになります。こうして「寝過ぎがよくない」ということです。


 このように片頭痛は、ミトコンドリア、活性酸素の観点から考えなくてはなりません。