ある男の人のはなし | 人を支援するコーチ・カウンセラー・セラピストのメンタルサポート

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いつも自分よりも他人(ひと)のこと、会社や仕事、家族を優先して大事にしているあなたが、そんな毎日の中でも、自分の目標達成や願望実現できるサポートをしています。

ひと昔前に、誰もがうらやむ裕福な商人の家庭に生まれ育った人がいました。

長男としてたいせつに育てられ、欲しいものは何でも与えられ、苦労することなく、穏やかで、心優しい人になりました。

やがて大人になり、当然の流れとして父親から商店を受け継ぎ、素敵な女性と結婚し、子宝にも恵まれました。

毎日店頭で座り、たくさん来店するお客様に対応し、お客様がいない時には新聞を読んだり、雑誌を読んで過ごしていました。

そんな彼にも、やがて時代の変化が訪れました。
多数の競合の出現、低価格競争、法改正など、激変とも言える様々な環境変化です。

でも彼は、お金儲けとか、商売を拡げたいとか、社会的権力といったものにまるで興味がなく、自分たち夫婦を頼ってお店に来る人たちに応えることだけを望みました。

子供たちに満足な教育機会を与えることだけを望みました。

そのような彼を慕って、富裕層や一般家庭の人々だけでなく、陽の当たらない世界の人々、貧しい人々、日本に来て困っている人たちなどもたくさん来るようになっていました。

どんな人に対しても態度を変えることなく、分け隔て無く平等に、優しく丁重に、損得勘定抜きで接するその人を慕って、「他ではイヤだ」と言って遠くから来る人たちもいました。

でも、大きな時代の波には逆らえませんでした。
商売っ気が無く、損得も気にせず、子供の教育にはお金を使い、いつしか日々の暮らしは大変な状況になっていきました。

それでも彼は毎日休み無く、新聞を読みながら店頭に座り続けました。

中には、そんな姿を見て、心無いいろんなことを言う人たちもいました。商売に成功し、儲けている人たちほど特に、いろんなことを言いました。

それでも気にせず彼は、新聞を読みながら店頭に座り続けました。

心の安寧を求めて、誰かに話を聴いてもらいたい、孤独な人生に誰でもいい、人の助けがほしい、他で冷たい対応を受けた、そんな人たちを笑顔で迎え入れ続けました。

できなかったのは、お金を貸すことぐらいです。その余裕が全く無かったので。


そうして、人々を支え、家族を支え、マイペースの小さな幸せをたいせつにしてきたその人でしたが、体調を崩してしばらく入院しました。

雪が静かに降りだしたある冬の日の朝、家族のもとに病院から1本の電話が入りました。

家族が駆けつけると、その人は静かに息を引き取っていました。

毎朝の日課である、ラジカセで好きな音楽をイヤホンで聴きながら、この世での役目を終えていました。苦しむことなく、静かな帰還だったようです。

その顔は、悲しいはずの家族の心に、不思議な安心感を与えてくれる、そんな、静かなやさしい笑顔での旅立ちでした。

人生の最期の瞬間まで、人に安心感をくれるやさしい笑顔の人でした。

突然のことで、残された家族はたいへんでしたが、誰の口からも、残念がる声と感謝の言葉しか出て来ませんでした。


人によって、いろんな望み、欲、幸せのカタチはあると思います。

その中で、人が心から安心して毎日を暮らせるなら、実は、日々の何でもない平凡な暮らしの中にこそ幸せはある。

そんなことを体現し、そのために人を支えて生きた男がいました。







僕の父です。

今でも誇りに想い、
僕なりの形でこのような人になりたと思い続けている、
僕の父です。