腹診で診断がすべて決まるとは決して思わない。しかし腹診が突破口になることも多々あることは事実である。胸脇苦満一つをとってもいろいろな問題点がある。もちろん胸脇苦満という腹候を認めそれを無視しなければならないケースなど日常茶飯事である。腹診は良師について学ぶのが1番いいと思うが全員にそのチャンスはないと思うし、基礎となる知識は必要と思う。しかし腹診の良書は少ない。私が勧める腹診の漢方書は
藤平健著 漢方腹診講座 緑書房
である。この本は、平易な文章で日常診療にすぐに役立つ実践的な内容で大変わかりやすい。例えば
瘀血の圧痛点は上方か下方へ放散する。
とある。この放散痛は熟練者には当たり前だが、腹診して腹を押し「どちらかに響きませんか?」という質問をするだけで診療の質はかなり上がる。どちらに放散するかで処方の目星がつく時もある。
しかし残念なことにこの名著は絶版なのである。私はこの本を中古市場で定価4500円なのを21000円で購入した。しかし21000円以上の価値があったと今でも思っているし、この本がなければ、私の漢方の上達はかなり遅れていたものと思っている。初版平成3年、再版平成6年であるので、そのころに漢方を始めた方はお持ちかもしれない。腹診に迷われている方の導入として是非お勧めしたい1冊です。また漢方出版関係の方には、この本は漢方の正しい理解に絶対に必要な1冊です。是非安価で多くの漢方を学ぶ方が手にとれるように再出版される日が来ることを待ち望んでいます。
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