さよならの時間~はじまり~
一面にきれいな花。
駅をおりて最初に目についたのは、そんな景色だった。
「横浜って都会じゃないのか・・・。」
思わず、一人でつぶやいた。
「まぁ、こっちのほうがほっとするけどさ。」
すれ違う人の目線に気づき少し口を閉じる。
昔っから、独り言が多い。
今年大学を卒業し、社会人になるために上京した。
九州の田舎から見たら、関東なんてどこも東京だと思っていた。
自分の住む町の田舎ぶりに少しだけがっかりした。
「社会人になったら、おしゃれな都会のおじさまと素敵な恋をしたい。」
大学時代の親友のアイナにわくわくしながら語ったことを思い出した。
そして、また、少しだけテンションが上がった。
「かっこいい人いるかな」
その頃の、私は、これから起きる未知世界にただ胸を躍らせてばかりいた。
ただ、私は、知らなかった。
恋愛は、きれいなことだけではないことを・・・・。
入社式にはたくさんの同期がいた。
隣の女の子とは、すぐに仲良くなった。
「さつきって、おもしろいね。」
「ありがとう。」
笑顔を見せる。昔から、調子にのって色々話してしまう。
こうやっていくつかの恋をダメにした。
言わなくていいことを、何も考えず口にしてしまう。
「さつきって、彼氏いるの?」
「いないよ。今、探してる。」
昔から、執着心にかけると思っている。
恋をして、ダメになっても、まぁいいやと思う。
どうしても、代わりがいないと思うような恋愛なんてしたことがない。
でも、そんな自分は嫌いじゃなかった。
前を向いて生きている自分は好きだった。
でも、私のこの性格が、大好きな人を傷つけてしまうなんて考えていなかった。
自分も相手もたくさん傷ついた。
浅はかな自分を悔しく思った。
その事実に気がつくのは、もう少し後になってからだった。
「あっ、おはよう。」
「あっ、おはよう。」
声をかけられて思わず笑顔になった。
目の前に知っている顔があった。
内定者懇談会で一回だけあった顔。
「知り合い?」
「内定者であったんだよ。」
これが、始まりだった。
忘れられない人との出会いだった。
「好きだったんだよね。熱い恋愛じゃないけど緩やかな愛に近い。」
ちょっとだけ、はにかみながら話す私に、アイナは黙って見つめてくれた。
親友の優しさに少しだけホッとする。
「いい出会いだったんじゃない。」
アイナがゆっくりと言葉を選びながら話してくれた。
そうだといいね。あなたにとっても。
今は、心の底からそう思うよ。
~つづく~