何かで読んだんですが、「歯が抜ける夢」とか「追いかけられる夢」みたいなこわい夢は、結構多くの人が見ている、「こわい夢」の定番だそうです。
コレって本当でしょうか? 私も追いかけられる夢はよく見ますが…。
さて、この本は短編集ですが、誰もに起こりうる、悪夢のような風景を切り取ったような本です。
本の裏表紙のあらすじの書き方がなんとなくイイカンジ。
以下、ネタバレがあるかもです。
では、角田光代さん著、『おやすみ、こわい夢を見ないように』の読書記録です。
印象に残ったシーン、文章をピックアップしていきたいと思います。
『このバスはどこへ』
『あたしですか、あたしはこれから人を殺しにいくんです。』
このストーリーは、バスで主人公くり子の後ろの席に座った、名も知らぬ女の一言から始まります。
とりあえず、最初の一文のインパクトが強すぎますね。 それがステキです。
この言葉をきっかけに、くり子は考えます。 自分にとって殺したいと表現したくなるような人間は誰か?
自分勝手な夫。
わがままな義母。
その二人をとっさに思いついたものの、くり子の答えはでません。
また、その話を聞いて、くり子の友人の宏絵は、自分の娘だと答えました。
自分は娘がかわいくてかわいくて、自分のことなんてほったらかしにしてまで娘を愛しているのに、
この子はいつか自分を捨てて、自分が入れないような世界をつくっていくんだ…。
そう思うと、頭がおかしくなりそうだと宏絵は言います。
なんか深いと思いました。
かわいいのに、居なくなっちゃえば…と思う気持ちってどんなカンジでしょうか?
それとも、かわいいから、居なくなっちゃえば…と思うんでしょうか?
一方、くり子はその話を聞いて、かつて(今も?)本気で殺したいと願った人間が居たことを思い出すのです。
その人物とは、篠山富貴子。 くり子が小学生の時の担任でした。
くり子は、彼女から徹底的に嫌われ、あからさまな嫌がらせを受けていました。
ここまでひどい先生はさすがに見た事はないけど、いますよね、こんな先生。
みんなの前で先生にののしられることって、小学生にとっては大ダメージなんです。
で、くり子が小学生時代の日々を回想するシーンに、こんな文章が使われています。
くり子が篠山にののしられているところを見て静まり返った他の生徒について、彼女はこんな風に考えるのです。
『母親より年長の女がくり子に向ける、憎しみのような怒りのような侮蔑のような、生々しい負の気分のかたまり。
そうしたものを、くり子と同様、クラスの子どもたちもあのときはじめて身近に見たのだろう。』
なぜか、この文章が一番「イイ!」って思ったんです。
生まれた時から、親や先生に「無闇に人を傷付けちゃだめ。」と教わってきたはずなのに、いきなり
理不尽に悪い感情をむきだしにする人物、しかもそれが先生だったらなおさらびっくりします。
こうやって、子どもたちは人間を怖いと思いこむ悪夢に身を投じてしまうのかなあと思うと、なんだか悲しかったり。
くり子は友人と別れた後、入院中の篠山に会いに行こうと決心します。
物語はここからが本番なのでしょうが、むしろ、前半の方が印象に残りました。
とは言え、後半もいらだたしいような、物悲しいような、独特の雰囲気が感じられます。
最後は、くり子がバスから夕焼け空を見るシーンで終わるのですが、なぜかその夕焼けの
色は、毒々しいような赤色なのかなあと想像してしまうのです。