夫は家族の写真をよく撮ってくれた。
さらに、写真は印刷して、アルバムにまとめ、コメントも入れて、きちんと整理してくれていた。
夫は撮影することが多く、撮影されることは少なかった。だから、ビデオでは音声はあるが、腕など一部分が映っているだけなことが多かった。また写真でも、旅先で人にお願いして撮影してもらった家族写真や自分たちで撮影した家族写真はあるが、一人の写真はほとんどなかった。
今の私。
夫の写る写真を探して、夫の顔を見たり、ビデオで、子どもたちの動きにコメントする夫の声を聞いたり。そんなことをしつつ、自分の心を落ち着けている。
一人で写る写真がほぼなかった夫だが、1枚、ドヤ顔した素敵な写真があった。
大好きなシトロエンC4ピカソを購入した時、シトロエンの方に撮影してもらった、夫とピカソの写真。夫は初恋の相手?であるピカソに心躍らせて、とても満足気な顔していた。
夫の遺影を選ぶ時、この写真しかないと思った。
髪も抜ける前で、本当に普段からの夫そのものって感じの写真で、肩掛けカバンをしていたので、紐だけ消してもらっただけの、ほぼ編集なしの写真。
先日、お世話になっている方と話をした。「遺影の夫さんがとても素敵な顔をしてますね。」と。だから、撮影した時のシチュエーションを話した。その方は、とても納得してくれた。「だから、嬉しそうで誇らしげな素敵な表情だったんですね。」と。
夫の遺影を見ると、今にも写真から出てきそうな感じがします。また、ドヤ顔していて「このぉー!」って笑って言いたくなります。
生きている夫と新しい思い出を作ることはできないけど、今も私の中で夫は生きていて、新しい思い出を作っています。思い出を思い出して、新しい思い出にしたりして。