キンコンカンコン。早々と時のたつ早さを告げるチャイムに慧梨は達弥を見た。
「ごめん、慧梨ちゃん
俺、教室に戻るや
」
達弥はすまなそうに言った。短時間で2人は"慧梨ちゃん””達弥君”と呼び合うようになった・・・。
「あ・・・うん・・・
」
慧梨は残念で頷いた。達弥は1-5。此処は、1-1。おまけに達弥のクラスから丁度階が変わってしまっている。達弥が全力疾走しても教師が来るのに間に合わないかもしれないのだ。それで、授業間の10分休みには会えない可能性が高かった。
「じゃっ昼休みにっ
」
そういうと達弥はダッシュしてしまっていた。慧梨は、名残惜しくてずっとその後姿を見つめていた・・・。達弥と2人の時は陽菜に何もされなかった・・・。でも達弥が居なくなると何をされるか分からない。慧梨は、慌てて席に着いた。陽菜は、机に向かってせっせと何かを書いていた。慧梨は大して気に留めなかった。何も言われなかったので、良かったと思っただけだった。優等生の陽菜でも宿題を忘れて今、やっているのか、と思ったぐらいだった。
「おっはよぉさん
」
明るい声と共に1-1のドアがガラッと開いた。入ってきたのは、24歳の若い教師で国語科。名前は、華村(

) 多佳子(
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)。比較的生徒が接しやすい人だ。
「あ~
もぉ、未恵子(

)ちゃんったらベルが鳴ったら着席~
一限目が私の国語だからってそう高ぶらないっ
」
華村の声に女子陣から声が次々に上がった。
「わぁ
国語なんて大嫌いっだってばぁ
」
「えぇぇ!未恵子、そうゆうつもりないって、多佳子っち
」
次々に上がる声に華村が笑った。
「ん~で~、陽菜ちゃんは何を書いてるのかなぁ
まさか宿題じゃあないでしょぉね
」
華村が陽菜を後ろから覗き込んだ。陽菜がパッと紙を隠した。だが、華村は顔色を変えた。
「・・・っ・・・陽菜ちゃん・・・
」
陽菜は俯いた。陽菜の茶髪が素早く陽菜の頬にまとわりついた。
「ねぇ・・・みんな・・・」
低い声で華村は言った。
「虐めってどういうことか分かってるの・・・
」
皆がざわめいた。陽菜に皆の視線が向けられた。慧梨も自分の事を書いていたんだ・・・と思うと辛くなって、下を向いた。