放課後・・・。
自分より先に・・・無言で帰宅してしまった耀子に慧梨は唖然としていた。今までに無かったこと・・・。当然の報いだった・・・。でも・・・。穏やかな耀子がそれほどまでに思いついていることを改めて知らされた・・・。
「あんさ、耀子?って子、乍がついてったけど大丈夫なわけ?」
相変わらずのダルそうな声で言う静に慧梨は、身体が寒くなっていった。どうしよう・・・耀子が変なこと言われたら・・・。
「追いかけな」
そういった静の力強い声に慧梨は頷いた。ダッシュで校舎を回りだした。でも・・・見つからない・・・。もう帰ってしまったのかも・・・。そう思って、トボトボ家に帰っていく慧梨の耳に急にあの声が響いた。
「ぇ~。てゅぅヵ、田村、最悪じゃん
」
慧梨の胸がズキッと痛んだ。田村・・・。嫌味な口調でも田村さんと呼んでいた陽菜がとうとう・・・呼び捨て・・・。
「耀子、ぁんな奴、構ぅことないよ
復讐してゃろぉ
」
慧梨は声の主を探した。ここは、ちょうどプールの垣根の向こう・・・。もしや・・・。慧梨は、そっとプールを覗いた。少し濁りかけたプールの水を前に心配そうな耀子と怒っている陽菜が見えた。慧梨は恐ろしくなって慌てて家へ走った。明日のことを想像したくなかった・・・。自分にとっての幸せが・・・耀子にとっての悲しみ・・・。そして、陽菜の怒りによってその幸せは明日・・・ブチ壊しにされる・・・。家に戻った慧梨は、ベッドにつっぷして泣きはらした・・・。
「慧梨?夜御飯よ。」
母親のその声に気付かず慧梨は泣き寝入りしていた。