「・・・耀子、田村サンに何か言われた~?」
笑顔で聞く陽菜を横目で見て慧梨は胸が痛み出した。激しい痛みに歯を食いしばる自分・・・。陽菜の言葉に躊躇して言葉を探し出そうとする耀子・・・。
「・・・ぇ・・・
」
悲痛な顔をして・・・でも慧梨を気遣ってかムリに笑おうとする耀子に慧梨は友達の大切さを再び教えられた気がした・・・。
「どうしたのぉ?ワケあり顔じゃん
」
陽菜の明るい声に耀子は小さな声でうめいた。
「な・・・なんでもないから・・・
」
陽菜は首をかしげた。
「ウソでしょぉ?!・・・んねぇ。放課後教えてぇ!ねっ、いいでしょぉ
」
苦々しく頷く耀子を見て、慧梨は苦い気持ちが隠せなかった。何で・・・耀子の気持ちが分からないんだろう・・・。陽菜を心の中でそう責めたててから耀子を苦しませているのは自分だと思い出し、悔し涙がついにこぼれた・・・。
「あんさ、乍のことはあんま、気にしなくていいと思うけど
」
キリリとした顔で慧梨に言い渡したのは、隣の席の円藤(


) 静(

)だった。無口で綺麗だけれどもどこか人とくっついていない。慧梨の憧れの人だった。その言葉に慧梨の身体がスーッと軽くなった。
「あ。はい
」
慧梨はそう答えて、また耀子に目をやった。そして、虚ろな目で空を見ている耀子にまた苦しさを感じた。その重荷から慧梨は逃げられない・・・と悟った・・・。