「・・・あ・・・あのさ・・・
」
休み時間に疲れた顔で陽菜達をチラ見する慧梨に話しかけたのは耀子だった。慧梨は無表情だった。
「・・・やっぱり・・・慧梨・・・た、大変そうだし・・・言わなくていいよ
・・・べ・・・別につ、付き合うとか・・・そういうのじゃないでしょ・・・
」
耀子の声に慧梨はゴクンと唾を飲み込んだ。
「・・・・・・・・・え、慧梨!?ち、違うよねっ
」
慧梨が反論できずに居ると耀子の肩が落ちた。
「そ・・・そうなんだ
あ・・・私は・・・慧梨を応援するね・・・」
小さい声で唇を噛み締めながら帰っていく耀子に慧梨は心が冷たくなった。いつも笑い合ってくれたり、一緒に何かをしてくれたり・・・そういう耀子を自分は裏切っていいのだろうか・・・。それに耀子が達弥のことを好きだと相談したとき、耀子は気遣ってか、達弥のことを好きかどうか慧梨に聞いた。慧梨は確かに答えた。
「え、達弥君??好きじゃないよ~
」
あのときの心の底からそう思った気持ち。それに慧梨は言った。
「わぁ、耀子、ガンバ!私、応援するっ
」
どこか寂しそうな面持ちで自分の席につく耀子に慧梨は胸が締め付けられて苦しかった。
「ねぇ、田村サ~ン??耀子に何、言ったのぉ
」
笑いながら陽菜がやってきた。慧梨は寒くなっていく自分の気持ちをなんとか暖めようとしていた。
「ね・え・?な・に・い・っ・た・の・
」
陽菜が笑顔で怖い声を使った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
」
何も言わない慧梨に陽菜の顔が引きつった。
「あたしにいえないことなのぉ?そぉなの、そぉなのね、田村サン
」
未だ黙っている慧梨に陽菜はバンッと机を叩いて、ニヤッと笑った。
「別にぃ、ムリはしなくていいからぁ。あたしぃ、耀子に聞くからぁ
」
慧梨の顔が蒼くなった。陽菜は、わざと小首をかしげた。
「なにか文句あるぅ?無いよねぇ
」
慧梨は歯を食いしばった。キンコンカンコン。学校のせっかちともとれるような速いチャイムが鳴ってガラッという音と共に保健体育科の驫木(


)教師が入ってきた。
「ぁ~ぃ、席ついてぇ~
」
驫木が陽菜を指差して言った。
「ぁ、はぃ、すいません~
」
陽菜は、ブリッコするとそそくさと席に座った。だが、陽菜がずっと慧梨を睨んでいるのが分かって慧梨は気になって仕方が無かった。