「ああ・・・空か・・・
」
家に帰って来た空に身体を乗り出した美紗希はため息をついた。
「また、親父、待ってんの
」
美紗希は、再び藍色のソファーに身体を沈めた。
「アイツは、早く帰って来た試しが無いんやから。ほっといて別のこと、しーさ
」
空の声に美紗希は、ため息ながらに起き上がると言った。
「・・・そうね・・・
」
空は、バッグを下ろすと、自分の部屋に歩いていった。そのときだった。ドアがガチャンと開いて、空と美紗希は振り返った。
「やぁ、空
それと美紗希~
」
空は、自分の父親、恭弘(


)を凝視した。
「何で、帰ってくんの
」
空の声に恭弘はポリポリと頭を掻いた。
「それがさー。あの仕事はボクには似合わないみたいで~
」
美紗希がハァと息をついた。
「また・・・失業?!」
恭弘は、ニコニコ笑いながら言った。
「残念だけど、そのとおりなんだよね~
」
顎が落ちている空と美紗希に恭弘は言った。
「でもさ、でもさ~。美紗希が働いてるから別にいーと思わない~
」
美紗希が反撃に出た。
「何言ってるの!私の収入は不定期で、いつクビにされるか分からないのよ
」
恭弘はニコニコしたまま言った。
「大丈夫だって~
美紗希は仕事上手だから~
」
美紗希は、信じられない、という顔で恭弘を見た。
「・・・ところで、今回は何でクビになったの」
気を取り直して、美紗希が聞いた。
「仕事が遅い~だって
」
空が身をソファーに投げ出した。
「今から心配になってきたわ・・・あたし、ちゃんと仕事つけんのかな
」
恭弘は笑顔で言った。
「大丈夫だよ~
空は美紗希似だから~
」
空は、父親をにらみつけると言った。
「別にアンタ似も嫌だけど、美紗希似だから心配なんじゃない
」
空の声に美紗希は言った。
「こらっ。誰が美紗希よ!親の呼び方もちゃんと言えんのかっ」
空が恭弘に言った。
「アンタのせいで美紗希が親父みたいな感じになってるじゃんか
」
恭弘は笑顔で答えた。
「大丈夫だよ~、美紗希だからね~
」
恭弘の声に空と美紗希は同時にため息をついた。そして、目が合った。お互い、逸らした・・・。恭弘はその様子が面白くて、プッと噴出した。そして、空と美紗希ににらまれた。