「あっ、琴巳ちゃん
」
前から歩いてくる女の子に急に問いかけられて、琴巳は戸惑った。
「あっ、違ったらすいません><」
女の子の声に琴巳の体の力みが緩んだ。
「・・・鈴木 亜樹ちゃん・・・」
亜樹は心から嬉しそうな顔をした。
「覚えてくれてたんだ・・・」
琴巳は大きく頷いた。
「も、もちろんっ」
亜樹はふと思い出したようにニコリと琴巳に微笑みかけた。
「そうだ、おめでとう!だねっ
」
琴巳は慌てて首をふる。
「そっ・・・そんな・・・・」
亜樹は、微笑んだまま言った。
「あ、亜樹のことは気にしないで。亜樹、別のプロダクションに採用(?)されたから・・・
」
琴巳が目を丸くした。
「すっ、凄っ」
亜樹が顔の前で手をふった。
「そんなことないって。本望は、こっちだったし・・・
」
琴巳は、また申し訳ない気分になった。
「ああ・・・だから気にしないでって・・・亜樹も結構楽しいから・・・。それに亜樹以外にも落ちちゃった子、一杯居るでしょ・・・?だから
」
琴巳は目を伏せた。自分がどれだけ勝利者ぶっていたか漸く分かった。
「ゴメン・・・」
謝る琴巳に亜樹は哀しそうな顔をした。琴巳は亜樹を見た。
「ゴメンなんていわないで・・・悲しくなってくるし・・・
」
ポロッと涙を零す亜樹を琴巳は罪悪感に浸って正面から見る事が出来なかった。
「・・・ぁ・・・じゃ、じゃあね
」
亜樹は、そういうと走っていった。琴巳は唇を噛み締めて、去っていく亜樹を見つめ続けていた。