「なんか、おかしい・・・・」


(あの、石田が飛びついてこない。後ろで歩いてるのに・・・・なんで?)
アリトリア学園への道を、癒芽は一人で歩いていた。
いつもならばここで、澪が癒芽に飛びついて来るはずだが来ない。
癒芽が澪の前に歩いているというのに、気にもしていない様だ。
(なーんか、調子狂うわねぇ・・・)


「い、石田!何で、いつもみたいに飛びついてこないのよ!!」
癒芽が堪えきれなくなり、澪に聞いてみた。
「ん?どうしたの。浪川。」
「へ・・・?」
澪は癒芽を『浪川』とは言わない。
何かがおかしい。癒芽はそう思わずにはいられなかった。
「もう。ほんと、調子狂う・・・」



「ふぁ~・・・」
鈴が大きなあくびをする。
放課後。授業が終わり、翠鴎と鈴が共に下校していた。
「どうしたの?鈴。あくびなんて。いつも、授業中に寝ているはずなのに。」
「どうしたって・・・翠鴎。浪川、どうにかしてよ。授業中ずっと隣で
『おかしい、おかしい・・・』ってぶつぶつ言われたんだよ?
おかげで、今日はまったく眠れなかった。早く、店に呼んで・・・・」
翠鴎がくすくすと笑いながら、鈴の話を聞く。
「ふふふ・・・・分かったわ。明日にでも、呼んでおくわ。」
「頼むよ、翠鴎。寝不足で倒れそう・・・」
「そうね。でも、そうするとしたら『石田澪』も呼び出さなければいけないのよ。
呼んでおいて頂戴。」
にっこりと笑顔で鈴にお願いをする。
この笑顔でお願いされると、鈴は断る事が出来なくなってしまう。
「分かったよ。いつ、どこに呼べばいい?」
「明日。店に呼んで。」
ビクリと鈴の体が反応する。
「店に・・・?」


同じクラスの者を店に呼ぶという事は、どういう意味か分かっているのだろうか。
鈴の事だけではなく、自ら正体を知らしめるという事になるというのに・・・
鈴は混乱しながらも「分かった。」と答えていた。


  =続く=