僕達は、向日葵の間を抜け、
洋館の敷地を囲う煉瓦塀のところに来た。
洋館は、南向きに建っているため
裏は、薄暗くてヒンヤリした空気が
流れている。
「何処で食べるの?」
章平が尋ねた。
「裏庭。この奥にあるんだ。
まぁ私は、そっちの方をメインに
使っているけれど…普段は誰も通さないんだが
今日は特別なお客さんがいるからね。
特別な事には、特別な事が付き物だろう?
だから『特別』に、入る事を許可しようじゃないか」
真志ーちゃんは、そう言ってニヤリを笑った。
ちょっと気味が悪い…。
「でも、これより奥なんて無いんじゃないですか?」
康一はまともな意見。さすが秀才。
「だから、奥なのさ。じゃあ絢。そこの門を開けてくれるかい?」
真志ーちゃんは塀を指さして言った。
「真志ーちゃん、それは無理よ」と操子。
「だって、ドアや門なんて無いわ」と七恵。
「開ける方が無茶よ」
操子が、小学2年生とは思えない、「無茶」と
いう言葉を使って、意見をまとめた。
最もな意見だ。
「…ほぅ。本当にそうかな?本当に、門が無いと思うかい?」
「だってある物はこの塀だけ」
やっぱり操子は賢い。
七恵は、操子に比べると、まだまだお子様だな。
(うん?待てよ。「魔法に会う」とか言う変なおじさんも、実は
真志ーちゃんの友人で、これは真志ーちゃんの企画した
頓知大会か?そうなのかな?大会まで行かなくても
この2人が、僕等をからかっている事くらい、推理できるぞ…)
別に推理小説が好きな訳では無いが、ちょっと探偵気分になって
色々と考えを巡らせてみた。
だけど、もし僕の『推理』が当たってるとすれば、
真志ーちゃんも、この篠原って言うおじさんも、冗談が下手だな。
まぁ、小学2年生のお子様が面白がっても、
僕と康一。中学2年生には面白くも何とも無い。
真志ーちゃんは、「絢と康一も同じ意見かい?」と尋ねた。
僕も康一も、自信たっぷり(半分退屈しながら)「うん」と答えた。
「ふぅ」
真志ーちゃんは溜息をついた。




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作・愛理