「なあ、アンタ、自信あんの?」
琴巳が席に戻ると隣の子にそう話しかけられた。
「ぇ・・・」
琴巳が思わず躊躇していると、琴巳の隣の子-303番の子がいないから304番の子-がニヤッと妖美な笑みを浮かべた。
「あたしは、負ける気せぇへんで」
・・・でも400人中10人しか受からないし・・・。琴巳は、正直自分が受かるかどうか凄く不安だった。なのにこの誘惑系の女の子は自分が受からない気がしないという。琴巳は、思わず言ってしまう。
「私も・・・っ・・・私もっ受かる!」
その子は、悠然と微笑み、綺麗な長い足を組み替えた。
「えぇよ。じゃあ、どっちが受かるか賭けへん?」
琴巳は、慌てた。そんな事して受からなかったら恥ずかしい。そういう琴巳を悟ったのか女の子は上唇を嘗めて言った。
「賭けはやめとこか。」
そういうと女の子は琴巳からバッと離れた。見ると、303番の女の子が歩いてきていた。琴巳は、その女の子に感嘆した。そして、こっそり彼女の名札を見た。田丸 空(たまる そら)。
「・・・あのコ、美人だよね・・・」
いきなり、303番の子に話しかけられて琴巳は、動揺した。
「あっ、ごめん!あのコの知り合いじゃないの・・・?さっき喋ってたから・・・。えっと、亜樹(あき)!亜樹っていうの。」
303番の子が鈴木(すずき) 亜樹と書かれた名札を見せながら言った。琴巳は、慌てて微笑む。
「私は、桐夕 琴巳・・・。宜しく。あの子とはついさっき、知り合って・・・。」
亜樹は、笑顔を見せた。
「そうなんだー。お互い、頑張ろうねー。」
琴巳は力強く頷いた。なんとしても、空、そして亜樹と歌手の卵になりたかった。