「ねぇ、石田君。今日の放課後空いてる?」
今日、澪は翠鴎に呼び出されていた。
ここは、アリトリア学園第一校舎の屋上。
澪は、一人で来ていた。翠鴎に「一人で来て」と言われていたからだった。


「待たせてゴメンね。石田君。ちょっと、先生に呼ばれちゃって・・・」
翠鴎が、黒猫を抱いて現れた。
「ん?あ、いいよ。気にしてないし。」
澪は笑顔で返事を返した。
「ありがとう。で、本題だけど。目閉じてくれる?」
「へ?」
澪は、なんとも予想外な事を言われ、瞬きを何度も繰り返した。
ただ目を閉じるだけなら、こんな所に、しかも放課後に呼び出さなくてもいいじゃないか。
そう思ってしまった。
「早く。」
「あ、うん・・・」
澪が目を閉じる。


  『・・・チリーン・・・』


(あ、この音。この前、聞いたような・・・あぁ、あの黒猫ちゃんの鈴の音だったんだ・・・)
鈴の音に耳を傾けているうちに、澪は何だか体が軽くなった気がした。
「はい。もう目、開けていいよ。」
翠鴎の声を聞き、澪が目を開ける。
「じゃあ、もう帰っていいの・・・かな?」
澪が不思議そうに、翠鴎に尋ねる。
それもそうだ。わざわざ呼び出されたのに、ただ前で目を閉じるだけで終わるなんて、
普通の者ならば不思議でしょうがないだろう。
「うん。ごめんね。」
「いいよ。んじゃ、また明日。」
手を振り、澪は帰っていた。


「にゃーお」
「これで、中井鳶樹の願いは叶えたわ。あとは、あの子しだいね。
さぁ、帰りましょうか。スズ。」


  =続く=