「ミャー。ミャー。」


「ん?あれ、ついて来ちゃったの?」
鳶樹が歩いていると、癒芽達と一緒に見つけた黒猫が鳶樹に寄ってきた。
「ふ~ん・・・やっぱり、お前腹減ってたのか。」
空気が変わった。
鳶樹の表情から、癒芽の前で見せる笑顔が消えている。
「うっとしいよ。」

鳶樹が黒猫に手を伸ばした。だが、黒猫は微動だにせず鳶樹が手に着けていた
ブレスレットを奪い、走り出した。
「あ、おい。待て!」
鳶樹も、追いかけようとしたが追いつかず、ただ疲れるだけとなった。
「ちっ・・・何なんだ、あの猫・・・・」


「みゃーお」
一匹の黒猫が、翠鴎の家へ入ってきた。
「あら、お帰り。スズ。どうだった?『中井鳶樹』は。」
翠鴎がスズに尋ねる。
すると、スズに霧のような靄がまとい始めた。
気がつけば、スズは鈴の姿に戻っていた。
「俺、アイツ嫌いだ。」
「そう。でも、いずれあの子は、此処のお客になるのよ。」
むすっと、鈴の頬が膨れる。
「分かってる。でも、嫌なんだ。アイツの『気』に、翠鴎の力を奪われる気がして・・・」
「怖い?」
「怖くは・・・ないけど。できるだけ、関りたくない。」
「そう。でも、仕方が無いのよ。これも、必然の出来事なんだから。」
「うん。あ、そうだ、これ。アイツの『一部』一日中、付けてたみたいだから。
十分、情報は得られると思う。」
鈴が、鳶樹の持っていたブレスレットを、翠鴎に手渡した。
「ありがとう。これで少しは、あの子達の願いを叶えるための、準備が出来るわ。」
翠鴎はそれを受け取ると、立ち上がり「じゃあ、店番頼むわね。」と言い、
自分の部屋へ、入っていった。


   =続く=