「・・・哀ちゃん・・・」
目をあげると、・・・誰だっけ・・・ああ、木村さん?凄く大人しいからマジで忘れちゃったりする。
「どうしたんですか、木村さん?」
成績優秀の木村さんの前じゃつい敬語になっちゃう・・・。あ~あ、誰かに木村さんがこれ、気にしてるって聞いたような気もするのに・・・。
「ん・・・あ・・・あの・・・ちょっと聞いてもらいたい事が有るんですけど・・・
」
ちょっとモジモジしてる木村さんってカワイイ
・・・でも何で、あたしに相談するんだろっ。だって、別に木村さんに友達がいないってワケじゃないし・・・。あっ、でも麻美はぶりっ子だからみんなと仲いいんだっけ。まあ、あたしに相談してもな・・・
「・・・えっと・・・ベン君って知ってますか?」
いきなり円らな瞳が真剣に輝いてる。ぇ・・・ベン君ってもしかして、あのベンかな・・・
「・・・ベンって人なら知ってるけど・・・」
木村さんがいきなりグッとあたしの肩を掴んだ。ぇ!?え!?何!?
「ベン君、元気ですか!?私、それが知りたくて
」
・・・ちょぉっと待って・・・。ベン君ってあのベンなら何で木村さんが知ってるの?それに何で、あたしが知ってることを知ってるの!?あたしがそれを聞くと、木村さんが目を伏せた。
「私・・・小さい頃にベン君と友達だったんです・・・
でも、私、父の都合で実家に戻って・・・。それで、また戻ってきたんですけど・・・ベン君の家から哀ちゃんが出たのを見て・・・」
何か・・・あたしと歌南子みたい・・・
それも男子とだからロマンチックかも!
「じゃあ、何で会いに行かないの!?」
あたしが聞くと、木村さんがさびしそうな目をした。
「も・・・もし、会いに行っても・・・気づいてもらえなかったら・・・って思うと・・・
」
あたしがバンッと机を叩いた。みんなが振り返った。あちゃ~。
「あのさっ、そんなウジウジしてないで会いに行ったら良いじゃない!ベンってそんな、人を覚えてないような人じゃないと思う
」
木村さんがホフッと息をついた。
「・・・そうですよね・・・。哀ちゃん、相談に乗ってくれて有難うございました
」
あたしは、胸をなでおろした。よかったぁ・・・。っ!!
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パパがママを叱って一段落がついた。でも、驚いた。酔っ払ったパパにそんな気力があるとは思わなかったから。ママは、しぶしぶボクがパパと泊まることを承諾して、大量の薬を置いて、帰って行った。
「・・・こんなにいつも飲んでるのか・・・
」
ボクは、苦々しく笑う。
「うん・・・まあ・・・。ママに飲まされるんだ・・・
」
パパの顔がみるみるゆがんでいったので慌てて付け足す。
「あっ、もう慣れてるからっ
」
パパが重々しく頷いた。ゲッ。酔っ払ってるとは思えないやっ。
「薬・・・、半分も飲めば十分じゃないか
・・・ったく、トリシアは・・・。アレコレ全部飲んだら良いってモンじゃないのになぁ・・・。おい、ベン、一度医者にきちんと処方箋貰ってくるといいぞ。」
分かったよ・・・。で、今日はどうするんだろ。
「あっ、パパ・・・ホントにボク、泊めてもらえるの?」
パパが笑った。
「何言ってる。今更、家に帰そうにも帰せないだろ
」
んん・・・まあね。帰されても帰れるとは思うけど。でも、やっぱりパパと一緒って嬉しいや。
「!!もう、11時じゃないか!ベン、寝ろっ」
・・・。ちょっと位夜更かしさせてよ