ドンッ衝。少女がぶつかって来た。

「すいませんびっくり

少女が驚き顔で言い、去っていくと俺は黙って元の道を歩き始めた。

「ベンがエイズらしいの・・・悲しむ

5年前に元妻に相談されたのを急に思い出した。俺とアイツは、ホント破局寸前で2人の共通する会話は、離婚の話と息子の話だけだった。

「ベンが貴方に会いたい・・・って。」

1ヶ月前に元妻が国際電話を掛けて来て言った。だから、俺は日本にまた帰ってきた・・・。息子の為に自分が日本に帰って来たのだと思うとなんだか、笑える。

「おお、マリアか。」

俺が前方を見て言うと、マリアが小さく頷いた。

「ご案内致します。」

マリアは、俺が十分近くに行くと、こそっと言い、そそくさと足を進めた。は、速ぇ?!

「マ、マリア・・・待て、もう少しゆっくり進んでくれないか0.0

マリアがツンとして、

「あら、すいませんでした。」

と、言い、足をとろ過ぎる位遅めた。俺・・・マリアに恨みなんか買ったっけ?? 今回は、別に遅すぎても何も言わなかった。そうすると、マリアが自分で足を丁度良い位に速めた。いったい・・・?おまめ


マリアが連れて行った先は、大きな家だった。

「トリシアは元気か?」

俺が聞くと、マリアが鼻を鳴らした。

「すぐ分かりますうー

俺は黙ってマリアの返事を聞き流した。俺が門から中に入った瞬間だった。中からトリシアの怒声が響いてきた。

「パパに会いたかったらそれで我慢しなさい!

「嫌だ!

負けずに男子の声があがる。・・・あんなにベンに超過保護だったトリシアがベンとやり合っているとは・・・わああ 俺は、そっと家の中に入っていった。2人は、キッチンで争っていたようだ。そっと、そこを覗くとベンがピエロの服みたいなものを指差して、

「こんなの嫌だ怒

と、怒鳴っていた。俺は、プッと噴出した。2人が振り向いた。