自分がたまたま税理士資格を有する公認会計士ということもあって、たまたま税金知識はある方だと思っているが、そうではない方々の税金に対する知識の無さというのは、結構凄いものがある。のっけから挑発的で何言ってんだと思われてしまっても困るが、言いたいのは、日本人があまりにも税金に対して無知なように育てられているか、ということだ。


多くの日本人にとって税金と聞いて身近に感じるものを順番にあげるとすると、
・消費税は5%
・配偶者控除で給料103万まで
・保険料の年末調整は12月

という程度のものであろうか。消費税が上がれば買い物に困るし、配偶者控除をもらえる上限は103万だから月9万弱で妻のパート給与をセーブさせようと考えるし、保険会社から毎年冬場にくる封筒の小さい紙切れを大事に保管し、会社の人事に出せばなぜかお金が翌年に戻ってくるらしい(その実際の額はよく分からないが)、まぁこんなところが税金と日本人の主な接点だろう。


日本人が稀有なまでに税金に無知なことの理由は、ズバリ年末調整を含む源泉徴収制度にあると言われている。私もそう思う。

個人が悪いのではなく、国がうまく税制を運営してきてしまったために、日本人は税金についてあまり疑問を呈さなくなってしまったのだ。国にとって、源泉徴収で年末調整を組み合わせることにより、確定申告を通じて税金知識を日本人から奪いとり、かつ企業を担保にすることで事務負担と税金回収リスクを企業に転嫁する、という素晴らしいシステムである。個人にとっても楽なことは間違いないが、給料の2割程度を占める税金等の支出について無知であることは、家計で10円100円を争う買い物を続けている状況とあまりにも対照的ではないか。

今からでも遅くない、給与をもらっている日本人は全員毎月の給与明細と毎年の源泉徴収票を見て、いったい全体なぜこんなに手取りが少ないのか、一回考えてみたらいかがだろうか。これだけで、税金や社会保険料というものがどのように計算・徴収され、国が無駄に使って財政逼迫となる原因の一端が垣間見えてくるだろう。


最後に念のため申し添えておくが、個人の所得税の仕組みをより良く知ったとしても、サラリーマンである限りは節税のチャンスはほとんど無いと言ってよい。唯一できることとしたら、結婚や出産のタイミングを綿密に計算して、配偶者控除や扶養控除(残念ながら廃止されたが)をタイミングよく利用することや、震災義援金拠出を寄付金控除することぐらいだろうか。しかしながら、これを残念に思わずに税金への意識を高めていただき、誰でも巡り合う相続税や企業の法人税などについても親しみをもつことになれば、人生の何かの利益になること請け合いである。