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流石です

 

片山 敬済

[ WGP 1980 SPAIN ] 2011/11/06

カメラマン: Hartung
エッセイ: じん あきら
ライダー: ”タカズミ”

[実力は表彰台で]

予想と反したマシンに火を入れた”タカズミ”を見つけたパドック仲間は驚きの声を隠せなかった。

サーキット中に甲高く響き渡る2万2千回転の木魂するエキゾーストノイズはそこには無かった。

”タカズミ”の絞り込むような手首の動きに反応して、軽やかに響くサウンズは、ロータリーバルブの4気筒マシンから排出されていた。

2万2千回転の木魂するエキゾーストノイズは、いつも周囲の人間たちを引きつけて離さなかったが、パドックでは聞き飽きたこの滑らかなサウンズは、聴衆を遠巻きにさせた。

距離を置いて棒立ちになる聴衆の理解に苦しむそのさまは、食い入るように見つめる瞼の大きな開かれかたに顕われていた。

異様な雰囲気だといって良かった。
が、それほど長くの時間を必要とせずに、観衆は意を得たようだ。

”日々新たなり” を繰り返すパドックに於いては、新しいこと、珍しいことには敏かった。
一人の観衆は二人に、二人が四人にと、狭いパドックで情報は瞬く間に行き渡った。

しばらくもすると遠巻きだった観衆が、元の友人へと態度を戻し、近づき話しかけてくる。

どうやら人と云う動物も、他の動物と同じように、理解しかねるときは距離を開けて”解”を得るまで見守るようだ。

それは最たる自己防衛本能の一環なのだろう。

ホンダの”タカズミ”が、スズキに乗る。
それがパドックで話題となるに、多くの時間は必要なかった。

まだ平穏な時間が流れるパドックでは絶好のニュース・ネタとなった。

練習だけか、レースに出るのか?
それは話題の集点だった。

普段はさほどシッカリ見もしないエントリーリストを開くと、そこに”タカズミ”の名前が連なっていた。
どうやら、走るらしい!!

早めにパドックインしていたジャーナリスト達は、情報を聴きつけ駆け付けた。
驚きと、嘲笑の入り混じった笑顔は想像に価する。

ジャーナリストにとっても、”タカズミ”が戦力あるマシンで走ることに期待も不審もあっただろうが、そんな話を直接本人にするほど間抜けでもなかった。

一番の関心ごとにジャーナリストたちは話題を向けた。

「HONDA は知ってるのか?」
確かに知りたいだろう。

「問題は起きないか?」
用意は周到だった。

「スズキは走りやすいか?」
まだ乗っていない。

「何位ぐらいに入れそうだ?」

ファクトリーの息のかかっているマシンを蹴るライダーが、8人はいた。

となると、9番手でチェッカーを受ければ ”おんの字” と、普通ならば考えたかもしれない。

全ての常識を覆すことのできるフィールド。
だから、サーキットはたまらなく面白いのかもしれない。

「何位ぐらいに入れそうだ?」
有り体に、「走ってみないと分からないのが、レースだよ」と、”タカズミ”は答えたことだろう。

慣らしも終えて、徐々にラップタイムを上げていく”タカズミ”は、
ピットインするごとに紅潮していた。

楽しんでいた。
Team KATAYAMA の全員が楽しんでいた。
楽しんでいるといってもアンコントローラブルで弾んでいるわけではない。

水を得た魚 に近い感覚だった。
TEAMの全員が水を得た、これはイケると。

真新しいマシンを股間に抱いた”タカズミ”は、そのマシンの安定した走りに感動した。

ジャラマの最終コーナーは中間地点で広く路面が荒れていた。
スロットルはパーシャル状態にして、荒れた路面をやり過ごす。
ギャップでタイヤが飛びすぎないように、コントロールする。

ギャップを過ぎる辺りから、もう一度スロットルを開いてガスを入れてやる。

スピードにすれば、ギャップ辺りが、220~230km位だろうか。

ステアリングは若干左右に振られながらも、ギャップをみごとに吸収している。
そのことに”タカズミ”は驚いた。

「素晴らしい安定感だ!」
”タカズミ”はそう思った。

何が”タカズミ”を次の行動に駆り立てたのかは解からない。
多分、彼から答えを聞けたとしても、とてもその行動心理を理解するに苦しんだと思う。

だが、それを ”タカズミ” は行動に移していた。

”タカズミ”は、あまりのハンドリング性能の良さに、こう考えた。

深いバンクの最中、そこにギャップが有っても、このマシンは、
操作なしに、勝手にコーナーを走り過ぎて行くんじゃないか?

そのように考えたという。

だが何故にレースの直前、そんなリスクある行動を起こす必要があるのかは、本人以外にはまったく理解できないミステリアスな領域だった。

昨年のベスト・タイムで走る ”タカズミ” は、最終コーナーに飛び込んで行った。
コーナー中央近くのギャップに差し掛かった。

この瞬間を迎えるに、待ちにまった一周だった。

アクセルはパーシャルから全閉にした。
とはいえマシンの速度やラップ・タイムに大きな変化を与えるものではない。

”タカズミ”は、あろうことか、その深いバンク角度のまま、両手を緩めた。
ステアリングは、毎ラップの動きと同じく、左右にゆれた。

フロント・サスはギャップを吸収しながら、両の手の膨らみの中で左右に首を振った。
”タカズミ”の手は、グリップに触れているだけだった。

ギャップを超える、1秒半ほどの時間、ステアリングはフリーに晒された。

この”タカズミ”の行動をキッカケに、ライダーと云う動物は可笑しな習性があることが段々と解ってきた。

「ひよっとすると、こうじゃないか、こうなるんじゃないか?」

と、ひとたび考えだしてしまうと、行動に移さずにはいられない動物だと解ってきた。

疑問を抱く思考回路が肉体の行動規範を制御したくなる。
そのように思えた。

オーバー表現かもしれないが、そのように行動しないと自己の存在理由を維持できない。
そんな気がしてきた。

たとえそれが、
多少のリスクを伴うことであっても、”自論を確認する衝動”に駆られてしまうようだ。

結果難なく、そして期待通りの結果を得てメインスタンド前を走りゆく ”タカズミ”は、確信の笑みをピットに送っていたに違いない。

その昔、進化論の著書の中に、

「進化することは危険を伴うことだ」
「リスクを伴わなければ進化は存在しない」

そのように記載されていたと記憶する。

ライダーにとって ”速く走る” は進化することで、危険をも ”成就” することなのだろうか。

不思議な生態系ジャンルに、ライダーが位置することは正直分かっていたが、
”進化論”と結びつくとは考えもしなかった。

ジャラマのサーキットから、フラメンコの聞こえるマドリッドは近い。
官能的に、極力抑えた動きの中に、感情を凝縮して、床を踏み、手を叩き踊るフラメンコ。

そのスペインで実力を鼓舞し表彰台に上がった ”タカズミ” は錆び落としのステップを踏んだ。

彼は、また進化したのだろうか・・・。

彼は、まだ進化するのだろうか・・・。

欺すのは良くないな~w

http://nihonworld.net/2016/02/07/%E8%B6%85%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%8C%E5%87%BA%E3%82%8B%E6%8A%98%E3%82%8A%E7%95%B3%E3%81%BF%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E3%80%8Cbirdy/

遅すぎだろ!本当の速さって何かね?
https://www.youtube.com/watch?v=8nQvLcuNCx8