クレオパトラも好んだと言われ、美女の代名詞のように使われる、赤いバラとトゲとの組み合わせが様々な話題を呼びますが、この赤いバラとトゲについては、「植物はすごい」(中公新書、田中修著)に2つのギリシャ神話が紹介されています。

1つは、白のバラ園を歩いていた女神の足の傷から流れた血が、白バラを赤く染めたというもので、もう1つは、きれいな赤いバラにキスしようとした男の子の唇を、バラの中にいた蜂が刺してしまったので、怒った母親の女神が、蜂の針を抜いてバラの茎につけたというものです。

 

いずれも、女神がからんでいるのは、やはりバラだからでしょうか。

それはともかく、私がこの本から教えられたのは、植物学者である著者が、小さな子から「なぜ、バラにはトゲがあるのですか」と質問を受けた時の対応です。

専門家らしく答えるのは簡単ですが、その子の真剣なまなざしを見て、逆に「どう思うの」と問いかけ、それを踏まえて説明をしたということです。

 

我々弁護士も、相談者の質問に対して、つい専門的に返答しがちですが、相談者の表情を見ながら周辺の事情を聞いているうちに、相談者が本当は何を聞きたいのかがわかってくるもので、田中先生のような丁寧な対応を常に心掛けたいものです。

 

これは、どの職業についても言えることでしょうが、最近気になるのは、スマホで相手の表情はもとより、心の動きが読み取れないままに会話が成立していると誤解すると、トゲのある返答をしていることがあるかもしれません。