タイトル 妖怪大戦争(1968年版)

公開年

1968年

監督

黒田義之

脚本

吉田哲郎

主演

青山良彦

制作国

日本

 

本作は、前作「妖怪百物語」のヒットを受けて制作された、大映の妖怪シリーズ第2弾。

脚本は前作と同じ吉田哲郎で、前作では特撮監督を務めた黒田義之が本編と特撮双方の監督を務めた。

前作は初代林家正蔵が確立したとされる百物語を軸に、怪談要素が強かったが、本作では海外の妖怪と日本の妖怪の対立を軸にした勧善懲悪のヒーロー・アクションが軸となっている。

ちなみに併映は楳図かずお原作の「蛇娘と白髪魔」と、羨ましすぎるラインナップだ。

映画の冒頭ではバビロニアの遺跡を荒らす墓泥棒により、悪の妖怪ダイモンが蘇り日本を目指すところから始まる。

時は江戸時代で所は伊豆。情け深い代官として知られる磯部兵庫は、嵐の夜領内を見回っている途中でダイモンに殺されてしまう。大門は磯部になり代わると代官所の祭壇を壊し、自らの食糧の為人間狩りを行い被害者の生き血をすするのだった。あまりの変貌ぶりに磯部の娘千絵と新八郎の二人は、疑念を抱く。新八郎は叔父で修験者の大日坊に相談すると、磯部は外国の妖怪と入れ替わっている事が判明。夜を徹しての祈祷と護摩焚きもダイモンには通じず、大日坊は逆に殺されてしまう。

代官の磯部は神田隆。大日坊は内田朝雄と、二人とも名脇役だけに演技は見ごたえ充分。ヒロインの千絵を演じる川崎あかねは本作がデビュー作となった。ダイモンの中の人は大魔神のスーツアクターとして有名な橋本力。本作でも目だけを出しているので、目力は健在。

その頃代官所の池に住む河童は、ダイモンが代官と入れ替わっている事に気が付き戦いを挑むが、あっさりと返り討ちにあって這う這うの体で逃げ出してしまった。妖怪の住処の荒れ寺に逃げ込んで他の妖怪たちに訴えるが「そんな妖怪知らんがな」と相手にされない。しかし「子供の血が飲みたい」というダイモンの命令で、代官所の役人たちに追われた漁師の子供が逃げてくると、ようやく事態が深刻であることを悟り、全員でダイモンに挑むも全く歯が立たず、妖怪封じのお札で瓶に閉じ込められてしまう。

妖怪で特筆すべきは、ろくろ首を演じた毛利郁子。前作に引き続き出演したが、これは監督の指名による。当時グラマー女優として活躍していたが、本シリーズではお色気を封印して妖怪役に徹している。

一方新八郎は磯部に化けたダイモンに戦いを挑み、苦戦しつつも何とか大日坊から預かった妖怪封じの矢でダイモンの右目を射抜くことに成功する。新八郎と千絵はダイモンを倒したと思っていたが、実は磯部の体を捨てただけで、次に赴任してきた新代官の大館伊織になり代わり、新八郎を捕らえ処刑するように命じるのだった。

途方に暮れた千絵は、難を逃れた二面女と唐笠お化けの頼みに応じ、妖怪封じのお札を剥がし、河童たちを解放する。大門御手ごわさに妖怪たちは日本中の妖怪を集め、凶悪なダイモンに戦いを挑むのだった。というのが大まかな粗筋。

おどろおどろしい怖さに満ちた前作と比べ、本作の妖怪たちは明るくユーモラスに描かれ、ストーリーも勧善懲悪に徹して、大人から子供まで楽しめる内容になっている。

最終決戦で油すましや青坊主らが必死にダイモンに挑むも歯が立たず絶望感が漂う中で、日本中から妖怪の援軍が駆けつけてくるところは今見ても胸が熱くなる。本作公開の時点でテレビアニメで「ゲゲゲの鬼太郎」は既に放送されているので、かなり参考にしたのだろう。妖怪側のヒーローとして油すましが活躍し最終決戦で唐笠の助力で空を飛び、ダイモンに止めを刺すところはかなり鬼太郎を意識している。

ダイモンも吸血妖怪ということで、いくらでも怖く、かつエロくできるところを押えて、あくまでも子供に楽しめるように作っているところも結果的に良かった。

2005年にリメイクされたが、映画としての面白さは本作の方が格段に上。どうしても「妖怪百物語」の方が評価が高いが、余韻が残るラストといい本作も決して負けてはいないと思う。