タイトル インシディアス 赤い扉

公開年

2023年

監督

パトリック・ウィルソン

脚本

スコット・ティームズ

主演

タイ・シンプキンス

制作国

アメリカ

 

本作は、人気ホラー映画の「インシディアス」シリーズ第5弾。現時点では最終章という事になっていて、シリーズ第2作にあたる「インシディアス 第2章」の10年後を舞台に、ダルトンとジョシュの記憶を封印することで平穏を取り戻したランバート一家のその後を描く。

前作から10年も経過している事に驚きを禁じ得ない。とはいえ、その後も2作られているが、いずれも第1作「インシディアス」でブレイクした、リン・シェイが演じる霊能者エリーズがランバート一家と出会う以前の活躍を描いたもの。シリーズとしては10年ぶりとなる。なお本作でもエリーズは特別出演して、シリーズを締めくくっているのはファンとしては嬉しいところだろう。

本作は主演のパトリック・ウィルソンが初めて監督を務めているのも特徴。

映画は祖母ロレインが亡くなり、その葬儀が撮り事なわれるところから始まる。ジョシュとルネは離婚しているが、特に関係が険悪という訳ではなく、前作で操られていたとはいえ、夫のあんな姿を見れば一緒にいるのは怖いだろうことは、容易に想像できる。

ダントンとジョシュの関係はどこかぎくしゃくしていて、記憶が封印されたとは言え前作の事は心に残っている様子。その上で、ダントンは美術を学ぶ為大学に進み、ジョシュが送っていくが、そこでも二人は口論してしまう。ダントンは変わらずタイ・シンプキンスが演じているが、思わず「大きくなって」と思ってしまうのが人情。他の作品で見かけても、そうは思わないんだが。

大学の手違いで同室になったのはクリスと言う女子。パワフルにものに動じない彼女がヒロインのポジションとなる。それと美術教授のアルマガン教授の授業で過去を解放したことで、幽体離脱の能力が復活してしまう。クリスにせっつかれパーティーに行くが、そこで“彼方へ”入り込み、その現場をクリスに見られてしまう。その後、クリスの勧めで幽体離脱の解説したYouTubeを見るシーンがあるが、そこに登場するのはシリーズお馴染みのスペックスとタッカー。このサービス精神は嬉しいところ。

ダルトンはクリスが見守る中幽体離脱を試みるが、その隙にクリスが悪霊に襲われ、急いで元の体の戻るアクシデントが発生。さらに、兄のフォスターから「ジョシュが自分たちを殺そうとしている夢を見た」と言われ、これらの事閉ざされた記憶がよみがえり、赤い扉の前で憑依されたジョシュの絵を完成させた。

その頃ジョシュは父親のベン・バートンの霊に取り憑かれ始め、調査したところ彼が精神病院に収容されている間に自殺したことを知る。彼はルネに問いただし、10年前に家族に何が起こったのかを知る。そして彼の父親も幽体離脱の能力を持っていたが、彼が見たものは精神疾患の結果であると信じていたことについての真実を明らかになる。そこに現れたフォスターは、メールで送ったダルトンの絵を見せるとジョシュはダルトンが危険にさらされていることに気づく。ジョシュはダントンの危機を救うため、ルネの協力を得てあの赤い扉のある世界に行く決心をする。と言うのが大まかな粗筋。

本作はスプラッター描写は皆無だしびっくり系も少なく、また異世界の描写も控えめでホラー要素は乏しい仕上がりになっている。もともとこのシリーズは脅かし系ではなく、じわじわと不安の恐怖をあおって来る系だが、それにしてもホラー要素は薄いと言わざるを得ない。逆に増えたのは人間ドラマ。親子や夫婦の絆の再確認するドラマパートがメインとなっている。悪霊によってすっかり壊れてしまったランバート家が、少しづつ家族の絆を取り戻していき、襲い掛かる悪霊に最後は団結して立ち向かい克服する姿が描きたかったのだろう。そして本作の最後は、シリーズを見守ったファンなら誰もが望む形で終わっている。ファンにとってこれ以上の終わり方はないだろう。そしてラストにはあの人まで登場しているのだから、もういう事はない。

シリーズの最後は、やはりこの人で飾るべき

 

本作をもってシリーズ完結という事になっているし、終わり方もきれいなので続編はないと思うが、エリーズの以前の活躍を描いたり、ダントンとクリスが超常現象に立ち向かいなどのスピンオフはあるかなと思っている。ただ、ジェームズ・ワンはかなり忙しいので、無理はしないで活躍して欲しい。