タイトル ガントレット

公開年

1977年

監督

クリント・イーストウッド

脚本

マイケル・バトラー デニス・シュリアック

主演

クリント・イーストウッド

制作国

アメリカ

 

本作は、証人護送を命じられた刑事と事件の揉消しを謀る上司の対決を描いたアクション映画。1977年のクリスマスシーズン向けの大作を欲しがったワーナー・ブラザースは、クリント・イーストウッド白羽の矢をあてた。この頃枯れ葉、「ダーティ・ハリー・シリーズ」が次々と大ヒットし勢いに乗っていた時。この選択は当然と言えたが、元々本作の脚本は、スティーブ・マックィーンとバーブラ・ストライサンドのダブル主演を見込んで執筆されたもの。本作が気に入ったのは「ダーティ・ハリー・シリーズ」と対極にある作品だったからだとか。

制作費の500万ドルは、これまでのクリント・イーストウッド主演映画の中では最大で、そのうちの125万ドルをアクションシーンに費やすという豪華仕様。中でも有名な警官隊が放つ銃弾の雨の中をバスで通過していくクライマックスでは、25万発もの爆竹を仕込み、電気仕掛けで銃弾大の穴が空くという特殊撮影を敢行した。その結果、映画史に残る大迫力のクライマックスとなった。

こいつと連絡とった後、必ず襲われるんだからいい加減気づけよ!

 

主人公のショックリーが、新たに市警察委員長に就任したブレークロックから呼ばれ、出頭するところから始まる本作。何事かと思ったら「どうでもいい容疑者をベガスからフェニックスまで護送しろ」と言うもの。なんでそんな任務を自分に?といった様子で引き受けるショックリー。というのも彼は、これまででかいヤマを担当した事もなく、勤務中での酒を飲み夜はホーカーにうつつを抜かすような、絵にかいたような不良警官。ただ、悪事には無縁だった。

翌日、髭を剃り身だしなみを整えたショックリーは、ベガスの警察署で引き渡される容疑者ガス・マリーが若い女であることを知る。彼女は娼婦で酷く留置所を出ることを嫌がり「今頃賭けの対象になっている」という。まともに取り合わないショックリーだったが、それらしい情報に接し、用心の為救急車で連れ出し途中でレンタカーに乗り換える事にするが、そのレンタカーが爆発。更に、救急車の後を覆面パトカーに追いかけられいきなり発砲される。マリーが反撃したおかげで何とか助かり、彼女の家に身をひそめる。そこでショックリーはブレークロックに保護を頼むが、気が付いたら警官隊に包囲され、一斉射撃を受ける。

何とか脱出した二人は、パトロール中の警官を人質にとると、再びブレークロックに連絡し、州境で保護を頼むが、マリーからブレークロックが怪しいと諭される。普通に考えたら、彼と連絡を取った直後に襲われているので、怪しいのは当然だが本作のショックリーはあまり頭が切れるわけではなく、大卒のマリーがこの後の逃避行で参謀役を務める。この二人のバディが凄くいい。マリーを演じているのがソンドラ・ロック。既婚だったにもかかわらず当時、クリント・イーストウッドと不倫関係にあった。ちなみにイーストウッドも当時既婚。そういえば本作には、ベガスの看守の役でイーストウッドがチョイ役で出ていた「世紀の怪物/タランチュラの襲撃」のヒロイン・マーラ・コーディが出演している。

マーラ・コーディの出演は、イーストウッド直々のオファーだったとか

 

そのあとマリーの説得で二人はパトカーを降りるが、警官が乗ったままパトカーは州境に向かい、待ち受けた連中からハチの巣にされる。

その後、なんやかんやあって何とかフェニックスまであと一歩のところに達し、そこで二人はバスを占拠。余った鉄くずなので運転席を覆い警官隊が待ち構えるフェニックスる乗り込むのだった。というのが大まかな粗筋。

 

本作にはいくらアメリカとは言え、ベガスでは警官たちが問答無用で撃ってきているし、最初に襲った覆面パトカーはマフィアかと思ったら警官という事になっている。州境で待ち構えていたのはマフィアだろうが、死体の確認をしていないしこの黒幕はずいぶんと手際が悪い。途中でヘリで襲ったのも警官だとすると、後々面倒な事になるのは必至だ。それと、マリーの持つ重大証言がどんなものなのはいまいちはっきりしない。単に娼婦に変態行為をさせただけで、これほど大騒ぎをして口を封じる必要はないだろう。ラストもちょっと強引に感じた。

その一方で、逃避行を繰り返す中で、次第と心を通わせていく様子は丁寧に描かれていたし、やや脳筋なショックリーに知的で観察眼に優れたマリーとコンビネーションも良く、本当に恋人だっただけに二人の息はぴったり。一応本作はか弱き女を屈強な男が守るという、典型的な図式ながらも、ちゃんと女の方にも役割を与えている。大ヒットしただけに続編もありそうだが、何故か1作で終わったのがなんとも残念。二人がコンビを組んで事件を解決するような話なら作れたと思うのだが。