The Witch 魔女(2018年)監督 パク・フンジョン 主演 キム・ダミ(韓国)

「魔女」と称される超能力を持つ少女ク・ジャユンと、彼女を生み出した組織との戦いを描き、韓国で大ヒットを記録したバイオレンスアクション映画。

ごく普通の女子高生に見えるが、これがすべて演技?


映画のラストに「第一部/転覆」とクレジットされているから、3部作程度はあると思うが、2023年に続編として「THE WITCH/魔女 —増殖—」が公開される運びとなった。ただ大ヒットしたにもかかわらず、第2部公開まで5年経過しているのは時間がかかりすぎる気がする。特に主人公が高校生という設定ならなおさらだが、主人公が変わるみたいなので、そのあたりはよくわからない。
映画の冒頭で、夜の森の中を必死に逃げる少女。追いかけていたミスター・チェは男の子は捕らえるものの少女は逃がしてしまうドクター・ペクは「どうせ彼女は暴走して死ぬ」とうそぶきその場を後にするが、その頃少女は酪農を営む夫婦に助けられ、ジャユンと名付けられるとすくすくと成長し10年が経過する。彼女は記憶喪失となっていた。彼女には父が警官をしているミョンヒがいた。

この傷の正体も不明なまま


牛の値下がりから家計は厳しく、母親は認知症を発症。ジャユンはミョンヒに勧められ、5億ウォンの優勝賞金目当てにテレビの「スター誕生」に出演することにした。
元々歌がうまく愛らしい容姿もあって順当に勝ち上がり、特技で手品を披露したことから人気が出る。実はこの手品は、彼女の超能力だった。その事から、ペク博士らの目に留まってしまう。
番組2次予選のために、電車に乗るジャユンとミョンヒの前に謎の青年が現れる。彼はジャユンが記憶を失っていることに驚き、その場を後にする。
実はジャユンは重病で余命は2、3ヶ月。治療には実親からの骨髄移植しかないと伝えられる。
地元の駅であの謎の青年がふてぶてしい態度で「急いで帰れ」と伝え去っていった。両親に危険が及んだのかと慌てて帰宅するが、たまたまミョンヒの父が居合わせてくれたからか無事だった。

覚醒ではなく暴露となるか?


ミョンヒがジャユンの家に泊まった夜、チェの武装隊が侵入。両親とミョンヒを人質に彼女を殺そうとするが、そこでジャユンは覚醒、武装隊を返り討ちにする。だがその直後に謎の少年を含む超能力部隊が到着。ミョンヒは止めようとするが、彼女を連れだしてしまう。
彼らはペク博士に先導されていたのだ。実はペク博士とチェは組織内で対立していて、ジャユンらの研究を進めようとする博士に対し、チェらは彼らを抹殺しようとしていた。
両親やミョンヒの安全を条件にジャユンは彼らに同行する。一方チェらは武装した精鋭を集め、研究所を襲おうとしていた。というのが大まかな粗筋。
本作は第1部という事で、世界観の構築に注力しているような印象を持つ。
特に終わり方が終わり方だけに、もしヒットしなかったらもやもやしたまま終了することになるところだった。育ての親との決別のラストでも一応完結するので、そこで完結という手段もあったはず。監督にとっては大きな賭けだった。
それだけに本作では様々な謎が残った。

驚異的な能力を持つジャユンに他の超能力者たちは太刀打ちできない


敵となる会社と呼ばれる謎の巨大組織(なんとなくアンブレラっぽく感じた)の目的も不明なままだし、主人公の両親もラストで仄めかされているものの明かされていない。あのラストからドクター・ペクとジャユンは研究者とモルモットの関係でなさそうだし、ドクター・ペクとミスター・チェが対立していた理由などなど。今後明らかとされるのだろうが、単体で見ると消化不良な点だ。
その一方で、主人公ジャユンは、そうした不満を凌駕するほどの魅力あふれるキャラとなっている。素朴で可愛らしい風貌ながら、覚醒すると驚異的な身体能力を持ち、超能力すら操れる冷酷非情な殺人マシーンとなる、そのギャップにドはまりした人は多かっただろう。ギャップ萌えというやつだ。
主演のキム・ダミはほぼ無名だったが、大ヒットを受けてテレビドラマで引っ張りだこの人気スターとなった。謙虚でかつ客観的に自分を見ているらしく、本作における自身の演技に関しては、新聞の取材に「残念な出来」とし、自己評価は「100点満点中60点」と絡めの採点をしている。


普段は平凡な少女の驚異的な潜在能力に、極秘実験によって生まれた人造人間という設定だけでも、少年ジャンプで連載すれば大人気となり、「ワンピース」も心置きなく終了できるはずだ。本作ではそうしたSFチックな設定にかかわらず、派手なCGに頼るのではなく、肉体のアクションに引き締まった演出で見せてくるもの好感が持てる。

このシーンが意味するものは?