ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2022年)  監督 コリン・トレヴォロウ 主演 クリス・プラット

かつてジュラシック・ワールドのあったイスラ・ヌブラルが噴火で壊滅し、恐竜たちが世界中へ解き放たれて早くも4年が経過するが、恐竜たちは繁殖して世界中に生息地を広げ、今や地球は、地上の支配者である人間と恐竜が混在する新たな世界「ジュラシック・ワールド」と化していた。恐竜たちによる人間社会への被害が問題になる中恐竜の保護活動を続けるオーウェンとクレアは、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女、メイジーを守りながら、人里離れた山小屋で暮らしていた。そんなある日、オーウェンは子どもをつれたブルーと再会。しかし、その子どもが何者かによって誘拐されてしまい、オーウェンはクレアとともに救出に向かう。一方、ある目的で恐竜の研究をしている巨大バイオテクノロジー企業のバイオシンを追っていたサトラー博士のもとには、グラント博士が駆け付け、彼らはマルコム博士にも協力を求める。

2018年の「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の続編で、「ジュラシック・パーク」シリーズの第6作目であり、「ジュラシック・ワールド」三部作の第3作目であり、完結編。
アラン・グラント役のサム・ニールとエリー・サトラー役のローラ・ダーンが21年ぶりにシリーズ作品に出演した事でも話題となった。
見終わった時の素直な感想は、果たしてこれを名作シリーズの完結編にしていいのだろうか。前作「炎の王国」のラストで提示された「人類と恐竜の共存」というテーマはどこかに置いて行かれ、最後まで明確な解答が出されていない。実際今作では恐竜は色々と出てくるのに、核となる魅力的な恐竜がおらず、代わりに今作のラスボスとして登場したのが何故かイナゴ。遺伝子操作で誕生したイナゴをどうするかが最大のテーマであって、恐竜はもはや映画の添え物でしかない。実際前作まで大きな役割を演じていたラプトルのブルーは、冒頭とラストにちょこっと出ただけ。メイジーとブルーの子供の救出が一応メインとなっているけど、救出劇自体さらっと終わっているというか、そもそも救出されずにメイジーは自力で脱出してそしてなんやかんやあって、オーウェンとクレアに都合よく合流できてしまう。この辺りの悪の巨大企業のくせにバイオシン社のセキュリティーのガバガバぶりは、興がそがれることはなはだしい。
恐竜を蘇られたのは遺伝子操作なのに、一方で遺伝子操作による作物は否定的に描くなどダブスタも目立つようになっている。この辺り「アバターウェイ・オブ・ウォーター」は行き過ぎた環境メッセージが話題となったが、こちらもそれに負けないほどの「恐竜は悪くない。悪いのは人間」メッセージのオンパレード。「ジュラシック・ワールド」になって以降感じていたことだが、恐竜が殺すのは主に悪い人間ばかりでいい方はほぼ殺さない。それどころか、普通の人間すらほとんど襲わなくなっている。仮に襲ったとしても、それは「悪い人間」の仕込みが原因となっている。それならそれで最後は「人類滅亡で地球は恐竜が支配する星となった」にすべきじゃないだろうか。もっともそんな映画、誰も見に来ないだろうが。
余談だが、今回サム・ニールとローラ・ダーン、そしてジェフ・ゴールドブラムと「ジュラシック・パーク」のオリジナルキャストが勢ぞろいした本作。そこは胸が熱くなるポイントだが、その一方でクリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードの「ジュラシック・ワールド」組の影が薄くなったように思えるのだが、果たして気のせいだろうか。