アバターウェイ・オブ・ウォーター(2022年) 監督ジェームズ・キャメロン 主演?サム・ワーシントン

あれから十数年が経過し、元海兵隊員のジェイクはナヴィの女性ネイティリと結ばれ、子供たちをもうけ、幸せに暮らしていた。しかし、ジェイクたちは再びパンドラに現れた人間たちに森を追われてしまい、海辺に住むメトケイナ族のもとに身を寄せる。だが、その美しい海にも侵略者が接近していた。

「アバター」の続編であり、全5作を予定しているアバターシリーズの2作目にあたる。前作から13年もの時を経て流体シミュレーションやレンダリングが大幅に強化され、キャラクターだけでなく背景の水や炎の挙動まで緻密に描写されるようになった。
その効果もあって、上映時間190分以上と言う長尺にもかかわらず、最後まで飽きさせないのはさすが。ただそれはパンドラの自然やそこにすむ生物、そしてナヴィ族の美しさ、それを実現した技術の進歩によるところが大きい。自然の美しさが技術の進歩により、表現可能となったのは何とも皮肉なところ。しかも物語自体家族の絆と言う、レトロな概念が描かれ、特に目新し部分が無いのは微妙なところ。
世界的に大ヒットしながら日本では失速気味だが、よく言われる「反捕鯨」は特に関係ないと思う。そもそも若い人は「捕鯨」に保守派の人が思うほど関心はない。私の元の職場にいた若い女性が、先輩から鯨肉をおごってもらったが、後で私に「鯨肉はまずい」と言っていた。確かに生まれてから牛肉を食べている世代には、おいしく感じないだろう。それよりも物語の陳腐さから、興味を持てなかった人が多いのではないだろうか。実際見ていてどんなストーリーだったかは、5秒で言えるほど希薄だ。それゆえ安心して見ていられるという事はあるが、子供が誘拐されそれを救いに行く事を、こう何回もやられればいい加減うんざりするし、原因を作るガキどもにも苛ついてしまう。
映像は凄いものの、シーンは既視感を感じるものが多い。ラストなんてもろに、キャメロンがかつて撮った「タイタニック」だし。それに死んだと思ったクオリッチ大佐が生き返る当り「ターミネーターかよ」と突っ込みたくなる。
それに過剰なまでのエコ崇拝もなんだかな~と思ってしまうところ。自然が厳しいから「自然崇拝」が誕生したのであって、優しいからではないわけだし。それと危篤状態のキリを現代医学では救えず、呪術と自然療法で救うあたりは、何かと問題のあるホメオパシーを礼賛しているように思えて、興がそがれてしまう。自然療法が全能なら、近代医学が始まったことにより乳幼児の致死率が劇的に改善したことを、どう説明するというのか。
キャメロンは前作「アバター」の後で探検家として活動していたという。そうした中、環境問題に関心を持ち、2010年4月には、ブラジルのアマゾンに計画中のベロモンテ水力発電ダムの建設反対運動に参加した。更に本人はヴィーガンである。何を食べようと個人の自由だが、得てしてそうした人たちは、その価値観を押し付けてくるので平行する。そのせいか、ここまでリアルにパンドラの生態を描いているのに、肝心のナヴィ族が何を食べているのかはっきりとした描写はない。ちなみに今回登場したメトカイナ族は「トゥルクン・ウェイ」と呼ばれる哲学により殺生を禁ずる平和的な種族と言う設定。「それなら何を食べているんだよ」と言いたくなる。
色々書いたが映像は素晴らしいことは間違いなく、もし興味があるのなら映画館で見ることをお勧めする。間違っても「円盤や配信でいいや」と思わないように。映画館で見ないと、この映画の良さは半分も伝わらないだろう。

ところでこの映画は、主演のサム・ワーシントンが全く姿を見せないが、「アニメ」なのか?それとも「実写」なのだろうか?