悪魔の沼(1977年) 監督 トビー・フーバー 主演ネヴィル・ブランド メル・ファーラー
テキサスで発生した連続失踪事件。捜査を進める警察はがやがて片田舎のモーテルにたどり着くが、そこには巨大なワニが飼われている池があった。モーテルの主人が宿泊客を大鎌で殺してはワニに喰わせていたのだ……。
「悪魔のいけにえ」で注目を集めたトビー・フーバー監督が次に制作したホラー映画。「悪魔のいけにえ」は野外ロケ中心なのに対して、「悪魔の沼」は一部のシーンを除き、ほぼセットで撮影されている。 そのせいかひどく窮屈な印象を持ったが、それが映画の陰惨さを際立たせている。この映画には監督のトビー・フーパー以外にも、脚本:キム・ヘンケル、出演:マリリン・バーンズなど「悪魔のいけにえ」のスタッフ・キャストが多くかかわっているほか、前作からのオマージュが随所に見られる。 また、キャシー・ヒルトンの妹であるカイル・リチャーズが子役として参加。 さらに、フーパー自身も通りかかった車の運転手役でカメオ出演している。
この映画は1930年代にテキサス州で起こったジョー・ボール事件をモチーフに作られているという。ジョー・ポールはアリゲーター・マン」「エレメンドルフの屠殺者」「南テキサスの青ひげ」などと様々な故障で呼ばれていたが、長い間実在が疑問視されていたしかし現在でもテキサスの民間伝承の中でおなじみのものとなっている。実際の事件も映画同様司法で裁かれることはなく、保安官代理2名が踏み込んだ時、ボールは隠していた銃を取り出すや否や、自分の心臓に向けて引き金をひいた事になっている。もっとも「悪魔のいけにえ」も実話が元となっているが、ほとんど原型がないというので、オリジナルストーリーと言ってもいいだろう。
狂気の殺人鬼を演じたネヴィル・ブランドの怪演が魅力。彼自身悪役が多く、「都会の牙」のギャング役、「やさしく愛して」でのエルヴィス・プレスリーを殺す役どころ、テレビドラマ「アンタッチャブル」のアル・カポネ役等悪役を得意としていて、今回もその実力を余すことなく発揮している。ちなみに「やさしく愛して」はエルヴィス・プレスリーの映画デビュー作。他にはのちに「エルム街の悪夢」の殺人鬼フレディーでブレイクするロバート・イングランドのエキセントリックさもいい。一方落ち着いた紳士役のメル・ファーラーの好対照な演技もいいアクセントになっている。とはいえかつてはオードリー・ヘップバーンの夫だった人が、B級ホラーに出演しているのを見ると、複雑な気分になる。とはいえ、さすがトビー・フーバーがメガホンをとっただけの事はあり、全般的に粗削りながらも力強い演出で、最後まで引っ張っていく好作品