キセル乗車 | 弁護士吉成安友のブログ

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荒川区西日暮里に事務所を構える弁護士。
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 報道によると、西武鉄道(埼玉県所沢市)社員がキセル乗車を防止する磁気定期券の「不正乗車防止システム」を不正に解除していた問題で、同社は11日、業務外でシステムを解除していた社員は29人で、うち駅員ら19人がキセルをしていたとする調査結果を発表したとのことです。

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100511/crm1005112153041-n1.htm

 キセル乗車といえば、詐欺罪に該当するかということが、刑法学者の間で長年議論されています。

 例えば、A駅→B駅→C駅→D駅となっている路線で、A駅からB駅までの切符をA駅の改札係に見せて電車に乗り、降りたD駅でC駅からD駅までの定期を改札係に見せて出たとします。

 この場合、切符はA駅からB駅までのもので、定期はC駅からD駅までのものなので、B駅からC駅までの部分の運賃を払っていないことになります。

 ここで、A駅でA駅からB駅までの切符を見せたことについて、この切符は犯行の手段として使われたものであるから無効で、正常な乗客であることを装って輸送の利益を得ているから、詐欺罪が成立するとする説があります。

 しかし、A駅からB駅までの切符は、B駅までの運賃を払っているものである以上、B駅を通過するまでは有効なはずではないかなどといった批判があります。

 一方で、D駅でC駅からD駅までの定期を見せたことについて、本来はB駅からC駅までの運賃を精算しなければならない義務があるところ、正規の運賃を支払ったように装い精算義務を免れているから、詐欺罪が成立するという説もあります。

 しかし、詐欺罪は騙して、相手を誤解させ、相手の意思に基づいて財産や利益処分させる犯罪なので、D駅の改札係がどの駅から乗ったのか分からず、請求すべき債務の存在すら知らない以上、改札係がその意思に基づいて利益を処分しているわけではないとする批判もあります。

 大阪高裁の裁判例は、詐欺罪の成立を認めていますが、私見としては、詐欺罪成立を認めるのは理論的には苦しいのではないかと思います。

 なお、詐欺罪はあくまで人を騙すというものなので、最初に取り上げた報道のケースのように、自動改札機でキセル乗車をした場合には、詐欺罪は成立しません。

 ちなみに、キセル乗車は、詐欺罪が成立しないとしても、鉄道営業法29条により犯罪となります。

 ただ、これは、刑が2万円以下の罰金なので、詐欺罪が10年以下の懲役なのと比べると極端に軽いです。

 また、キセル乗車をした場合の民事上の責任としては、鉄道営業法18条と鉄道運輸規程19条により、運賃プラス運賃の2倍の割増運賃を請求されることになります。

 

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