弁護士吉成安友のブログ

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荒川区西日暮里に事務所を構える弁護士。
大分県豊後高田市の若宮八幡神社の宮司を900年務める家に生まれ,神職資格を持つ。
Rockな魂と仕事への情熱であらゆる分野で最強を目指し日々研鑽しています!

「長野県富士見町が、住民の男性(82)に水道料金徴収の時効を大きく超える14年前からの滞納分と延滞金計約607万円の支払いを求めて提訴し、その主張を認める長野地裁諏訪支部(手塚隆成裁判官)の判決が確定したことが分かった」というニュースがありました。

時効を教えず町が勝訴 14年間分の水道料金を請求(朝日新聞)

なんかネガティブに報道されている印象ですが,ちゃんと払っている他の住民にしわ寄せがくることなども考慮すべき話だと思います。

他方で,なんで町は,そこまで放置してたのっていう疑問もありますが・・・・

さて,時効期間を経過した部分について請求をしてはいけないかというと,特に現状の時効の援用についての理解からすれば,そうはいえないと思います。

時効(消滅時効)とは,権利を行使することができる時から一定期間権利を行使しないと,その権利が消滅するというものです(民法改正で,主観的起算点,すなわち,権利を行使できることを知ったときからは通常より短い期間で完成する場合も追加されました)

ただ,時効期間が経過したから,それで消滅ということではありません。

「援用」ということをしなければ,時効の利益は受けられないのです。

と,相談者や依頼者に説明すると,「援用って何?」っていわれます。

この説明が意外と難しい。

時効の利益を受けようとする意思表示のことですと教科書的な説明しても,援用という言葉自体が馴染みがなかったり,漢字の感じから受けるニュアンスと違うのか,なかなか伝わないところがあります。

しょうがないので,援用はえんよーとごまかす!

それは,嘘です(笑)

最近は,「時効という制度は,『使います!』と言わないと,効果が出ないんです」といった説明で,なんとかというところです。

まあ,この説明は,現在の判例通説の理解によればというところで,そもそも民法の規定が紛らわしいのです。

一方で,債権は,一定期間が経過すれば,時効で消滅するとの規定をおきながら,他方で,援用を定める民法145条は,次のような表現になってます

時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない

あれ,援用って,裁判所が裁判できるかどうかだけの話なの?

そしたら,一定期間が経過すれば,それで消滅はしてるんじゃないの?と。

かつては,判例も,援用は,あくまで裁判レベルの話で,期間が経過すればそれだけで時効の効果は生じているとしているとの説に立っていると理解されていました。

ただ,当事者が持ち出さなければ裁判所が裁判の基礎にできないのは,時効に限った話ではないので,それだと民法145条があまり意味がない規定となります。

そうしたところ,昭和61年に最高裁は,「時効による権利の消滅の効果は,時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく,時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当」と判断しました。

援用しないと,確定的に時効の効果は生じないとしたわけです。

これは,援用という制度の趣旨について,時効の利益を享受するかをその人の良心に委ねたものとする一般的な理解と合致するものといえると思います。

そんなわけで,援用しなくても時効が完成してしまっているとすれば,請求するのは問題といえますが,援用するまで時効の効果は確定的に生じてはいないということであれば,請求しても必ずしも悪いといえないと思われます。

ちなみに,私は,これまで依頼された訴訟で,時効期間を経過している部分については,請求に入れたことがありません。

これは,主として,依頼者のためです。

時効期間が経過した部分についての請求をしても,かなりの確率で時効を援用され,その部分の請求は認められないことになります。

そうすると,着手金は請求金額に対するパーセンテージなので,着手金も高くなるし,裁判所に納める手数料も高くなるので,依頼者に負担となるからです。

また,裁判所に,ちょっと筋悪だとの印象ももたれかねず,訴訟展開上もマイナスになる可能性もあります。

じゃあ,相手が本人訴訟で対応しそうで,時効制度に詳しくなくて,援用しない可能性もあるとした場合はどうか?

それでも,ちょっと気持ち悪い感じがあるんですよね。

ただ,本当に世の中には多種多様なケース,多種多様な事情があるので,一概に全ての場合にしないとも言い切れない面もあります。


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緊急事態宣言が解除され,6月にも入りましたが,4月5月に取り消された裁判の期日は,ほとんどがまだ新たな期日が決まっていない状態です。

東京地裁は,期日を再開するとアナウンスしていますが,「当分の間,各部ごとに隔週で開廷週と非開廷週を設けることとし,期日の実施数も,段階的に増やしていくこととします」とあるので,2ヶ月分たまってしまっていることを考えると,通常の進行に戻るまでには,まだまだ時間がかかるかもしれません。

そんななか,東京家裁のある事件で,「書面による準備手続」の打診がきました。

正直,そうきたかと割とびっくり。

弁論準備手続は,電話会議で行うこともできます。

ただし,「当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る」というものです。

先月,私の受任事件で唯一行われたのは,遠方の弁論準備手続の電話会議でしたが,相手の先生は地元の方なので,出席し,私のみが電話でという形でした。

争点整理手続のいわばスタンダードである弁論準備手続では,原被告の双方が電話でというのはできないのです。

しかし,民事訴訟法には,弁論準備手続のほかに,書面による準備手続というものがあります。

これは,民事訴訟法175条に,下記のように定められているものです。


裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。

そして,176条3項は,


裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。

とあります。

この手続では,原被告とも電話で行うこともできるのです。

書面による準備手続は,これまで,ほとんど使われていなかった手続です。

コロナ感染拡大防止対策として双方出なくてもよい手続をするために,ついに日の目を見た感じです。

てか,双方代理人とも遠方の時,1回毎に交代で5分の期日のために何時間もかけて出頭するのがなんだかなあと思ったこともあり,もっと積極的に使ってもいいんじゃないかとも思うところです。


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最近話題の賭博罪ですが,賭けをしたらどんな場合でも成立するということではなく,「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は成立しません。

問題は,どんな場合が,「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」に当たるか?

この点に関する最高裁の判例は,かなり古くて,昭和23年10月7日のもので,

本件賭博は仮りに所論の縷述するような賭金の少額なこと等の事情があるとしても、骨牌を使用し偶然のゆえいに関し金銭の得喪を争つたものであることは、判文上明らかなところであつて、単に一時の娯楽のためにしたもので罪となるべきものでないとはいえない

としています。

「骨牌」はここでは花札のことで,「偶然のゆえい」にというのは,偶然の勝ち負けという感じの意味です。

まあ,賭金が少額などといった事情があっても,この件では一時の娯楽のためにしたものでないとはいえないとしたもので,具体的な基準は提示していない感じですね。

この事案で,いくら賭けたと認定されているかは,私の導入している判例検索システムに一審判決が掲載されていないので,正確には分かりません。

ただ,被告人本人の上告趣意によれば,自分が200円,相手が100円の300円だったそうです。

といっても,昭和時代の話なので,今とは貨幣価値が違いますよね。

これも本人の上告趣意によるところですが,この頃は,うどんが1杯50円,ピースが1箱60円だそうです。

そうすると,うどん6杯分,ピース5箱分のお金でも,罪になったということですね。

ちなみに,この被告人は,「こんな時代に(*うどんが1杯50円,ピースが1箱60円の時代に)場錢三百圓と言へば前の二十錢三十錢であります。ほんの女子供の娯と同類のものであります。」なんて言ってます。

しかし,令和時代の人間(私は,こう見えて令和生まれではありませんが)には,「前の二十錢三十錢」というのがよく分からないところです(笑)



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