過活動膀胱は

中々相談しにくい症状かもしれませんが、

40才以上の日本人の12%に

症状がある¹⁾といわれています。

 

おおよそ8人に1人の割合なので

珍しくない症状です。

 

 

 

過活動膀胱に対する鍼治療の研究は主に

 

・仙骨神経を刺激する方法

 

・後脛骨神経を刺激する方法

 

二つの研究が多くみられました

 

 

仙骨神経刺激は

仙骨孔(仙骨に左右4か所ずつ空いている穴のこと)に

電極を埋め込み、

持続的に電気刺激を与え続ける手術の他に

 

鍼灸では“中髎”(ちゅうりょう)という

仙骨孔の上のツボに対して

鍼をする方法があります。

 

 

“過活動性膀胱に対する鍼治療の有用性に関する検討“²⁾では

11例中5例で尿失禁の消失を認め、

全体では81%の改善率であったと報告している。

 

”尿失禁を呈する過活動性膀胱に対する鍼治療の有用性”³⁾では

33例中6例に尿失禁の消失が認められ、

尿失禁量が50%以上改善した症例は

33例中16例と報告しています。

 

 

いずれも一定の効果がみられたようです。

 

しかし、どちらの研究も

比較対象のグループがないデザインですので

効果の解釈には注意が必要と思われます。

 

 

後脛骨神経刺激は

“三陰交”や“照海”という

内くるぶしの近くにあるツボに対し

鍼通電または電極を使用して

刺激する方法です。

 

 

”Percutaneous tibial nerve stimulation versus tolterodine 

for overactive bladder in women: a randomised controlled trial”⁴⁾

-女性の過活動膀胱に対する経皮的脛骨神経刺激とトルテロジンの比較:ランダム化比較試験-では

 

38名の患者さんを

”後脛骨神経刺激”グループと

”服薬(トルテロジン)”グループに分けて

効果を比較した結果

両グループともに失禁回数の減少と

生活の質の向上がみられ、

両グループ間の有意差は無かった、と報告しています。

 

 

また、

“Solifenacin succinate versus percutaneous tibial nerve stimulation in women with 

overactive bladder syndrome: results of a randomized controlled crossover study”⁵⁾

-過活動膀胱症候群の女性におけるコハク酸ソリフェナシンと経皮的脛骨神経刺激療法:

ランダム化対照クロスオーバー研究の結果-では

 

40名の女性患者を

”後脛骨神経刺激”グループと

“服薬(ソリフェナシン)”グループに分けて

効果を比較した結果

両グループともに

排尿回数・夜間頻尿・失禁回数の減少がみられました。

”後脛骨神経刺激”グループの方が

より一回排尿量の増加がみられた(尿を多く溜められる)と報告しています。

 

 

こちらも同じ研究者の報告で

“Effectiveness and durability of solifenacin versus percutaneous tibial nerve stimulation 

versus their combination for the treatment of women with overactive bladder syndrome:

 a randomized controlled study with a follow-up of ten months”⁶⁾

-過活動膀胱症候群の女性の治療におけるソリフェナシン、経皮脛骨神経刺激、

それらの併用の有効性と持続性:10ヶ月の追跡調査を伴うランダム化対照研究-によると

 

105名の女性患者さんを

“後脛骨神経刺激”グループ

“服薬(ソリフェナシン)”グループ

“後脛骨神経刺激と服薬(ソリフェナシン)の両方”グループに分けて

 

”過活動膀胱症状スコアアンケート”で効果を比較した結果

 

いずれものグループでも効果が認められたこと

 

服薬グループより後脛骨神経刺激グループが高い有効性を示したこと

 

後脛骨神経刺激と服薬両方のグループが

最も効果が高く、持続時間も長かった、と報告しています。

 

 

 

 

それぞれの治療方法を比較した研究

“Comparative Efficacy of Neuromodulation Technologies for Overactive Bladder in Adults: 

A Network Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials”₇⁾

-成人の過活動膀胱に対する神経調節技術の有効性の比較:

ランダム化比較試験のネットワークメタアナリシス-では

 

仙骨への電極埋め込み術が

生活の質・排尿エピソード・頻尿に対して

最も効果的であることが示され、

 

後脛骨神経刺激が

尿失禁と尿パッドの数の減少に対し

最も効果的であることが示されました。

 

 

 

 

鍼灸院では

電極の埋め込みは出来ませんが

仙骨神経を鍼で刺激することは可能です。

後脛骨神経刺激と併せることで

より高い効果が望めると思われます。

 

 

また、服薬と併用することで

より効果的と報告されていますので

現在服薬治療中の方でも

かかりつけの先生と相談の上、

鍼灸治療をお試し頂ける可能性があります。

 

 

 

以上、長くなってしまいましたが

過活動膀胱や排尿に関してお困りの方の

ご参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 

参考文献

 

1)国立病院機構:https://kanazawa.hosp.go.jp/pv/pdf/leaflet/hinyou_kakatsudouboukou.pdf(令和5年9月15日閲覧)

 

2)北小路 博司, 寺崎 豊博, 本城 久司, 小田原 良誠, 浮村 理, 小島 宗門, 渡辺 泱, 過活動性膀胱に対する鍼治療の有用性に関する検討, 日本泌尿器科学会雑誌, 1995, 86 巻, 10 号, p. 1514-1519

 

3)本城 久司, 浮村 理, 小島 宗門, 河内 明宏, 岩田 健, 稲葉 光彦, 北小路 博司, 三木 恒治, 尿失禁を呈する過活動性膀胱に対する鍼治療の有用性, 日本泌尿器科学会雑誌, 2002, 93 巻, 2 号, p. 230

 

4)Preyer O, Umek W, Laml T, Bjelic-Radisic V, Gabriel B, Mittlboeck M, Hanzal E. Percutaneous tibial nerve stimulation versus tolterodine for overactive bladder in women: a randomised controlled trial. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2015 Aug;191:51-6. doi: 10.1016/j.ejogrb.2015.05.014. Epub 2015 Jun 3. PMID: 26073262.

 

5)Vecchioli-Scaldazza C, Morosetti C, Berouz A, Giannubilo W, Ferrara V. Solifenacin succinate versus percutaneous tibial nerve stimulation in women with overactive bladder syndrome: results of a randomized controlled crossover study. Gynecol Obstet Invest. 2013;75(4):230-4. doi: 10.1159/000350216. Epub 2013 Mar 28. PMID: 23548260.

 

6)Vecchioli-Scaldazza C, Morosetti C. Effectiveness and durability of solifenacin versus percutaneous tibial nerve stimulation versus their combination for the treatment of women with overactive bladder syndrome: a randomized controlled study with a follow-up of ten months. Int Braz J Urol. 2018 Jan-Feb;44(1):102-108. doi: 10.1590/S1677-5538.IBJU.2016.0611. PMID: 29064651; PMCID: PMC5815539.

 

7)Huang J, Fan Y, Zhao K, Yang C, Zhao Z, Chen Y, Yang J, Wang T, Qu Y. Comparative Efficacy of Neuromodulation Technologies for Overactive Bladder in Adults: A Network Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Neuromodulation. 2022 Aug 18:S1094-7159(22)00752-8. doi: 10.1016/j.neurom.2022.06.004. Epub ahead of print. PMID: 35989159.