鍼灸と妊娠時の腰痛

テーマ:

腰痛に鍼灸治療が効果的なのは

広く知られたことですが


今回は妊娠時の腰痛に関して

どのような治療でなぜ効くのか?について

書いていきたいと思います



まずは治療方法からです



通常、腰痛治療では腰まわりを中心に

鍼をしていくことが多いのですが



妊娠時の腰痛では足のツボに

鍼をしていきます



上の図で

ふくらはぎの内側・膝の内側・ももの内側

に赤く印をつけたツボを主に使います



横になった状態で

これらのツボに鍼をし

そのまま10分ほどゆっくりしていただきます



その後鍼を抜き、腰まわりに“棒灸”をおこないます

棒灸というのは筒状にしたモグサを燃やし

身体から数センチ離したところで熱を送るものです

この時の熱感としては温かく感じるくらいの

心地良いものです



以上が妊娠時の腰痛治療の主な内容です



この治療方法は以下の論文を参考にしています

(1) 形井秀一.築賓穴で効果のあった腰痛症.日本経絡学会誌. 1995; (26) : 67-71.

(2)·形井秀一; 松本 毅; 中村伊佐雄; 植月祐子;妊娠中の腰痛と外傷性頚部症候群に対する上下肢刺鍼        の効果 : 全日本鍼灸学会誌, 2003:53, 1, 21, 27.




ではなぜこうした治療が効果的なのか?という理由です



実際には明確な理由というのは

まだわかっていませんが

いくつかの可能性が考えられています


その可能性として“体性自律神経反射”と

“デルマトーム”があげられます



“体性自律神経反射”というのは


「皮膚や筋に種々の体性感覚刺激を加えると

内臓の各器官に自律神経を介して

種々の反応が誘発される」というものです

(1980. 23. 3. グレンツゲビー. ト. 体性-自律神経反射について. 佐藤 昭夫より)(3)

この働きにより、足のツボに鍼灸刺激を加えることで

子宮筋の緊張をやわらげる効果

子宮への血流量が増加する効果

が報告されています(4)

子宮筋の緊張をやわらげ血流を改善することで

腰痛をやわらげる、という可能性が考えられます



もうひとつの“デルマトーム”というのは


一つ一つの背骨から伸びている感覚神経が支配する領域のことです

腰や仙骨から出ている感覚神経は足まで伸びています


このことから

足のツボに鍼をすることで

腰まわりの感覚神経の興奮をおさえ

痛みを緩和させる

という可能性が考えられます



以上が鍼灸治療の作用として考えられることです




鍼灸治療の安全性についても研究されています

“妊娠中の腰痛・骨盤痛に対する鍼治療の安全性と有効性に関する文献検討”(5)では


「治療方法は深く刺入したものや耳鍼を中心に行ったものなど多様であったが、全てで痛みは対照群よりも有意に減少しており、ADLについても改善がみられた。母体や新生児に対する鍼治療に関連した有害事象は認められなかった。文献調査では妊娠中の鍼治療の有効性と安全性が認められたが、多くがスウェーデンでの論文であり、日本人が受け入れやすい方法で検討する必要がある」とあり

効果や安全性の確認とともに日本人向けの調査・研究を充実させる必要性を指摘しています



治療にあたっては母体や赤ちゃんの状態を

お聞かせいただいてからすすめてまいります

病院などで指摘されたことなど

あらかじめお伝えください






妊娠中の腰痛は

どこに行けばいいのか?と

お困りの方も少なくありません



お困りの際にはお気軽にご相談ください



参考文献

(1) 形井秀一.築賓穴で効果のあった腰痛症.日本経絡学会誌. 1995; (26) : 67-71.

(2)·形井秀一; 松本 毅; 中村伊佐雄; 植月祐子;妊娠中の腰痛と外傷性頚部症候群に対する上下肢刺鍼          の効果 : 全日本鍼灸学会誌, 2003:53, 1, 21, 27.

(3)1980. 23. 3. グレンツゲビー. ト. 体性-自律神経反射について. 佐藤 昭夫

(4)全日本鍼灸学会雑誌51巻1号. 第49回. 全日本鍼灸学会学術大会. セ ミナ ー.女性と鍼灸-子宮の神経性調節と体性感覚刺激―.志村まゆら. 筑波大学附属盲学校理療科

(5)水本綾子.南一成.中込さと子:妊娠中の腰痛・骨盤痛に対する鍼治療の安全性と有効性に関する文献検討:東洋療法学校協会学会誌(0911-8071).33.198.202.2010