筋肉の張力は脊髄から伸びているγ運動ニューロンと交感神経によって制御されています。(1
交感神経は骨格筋を直接的に支配していることが明らかにされており、
さらに交感神経は筋肉内の血管も支配しています。
そのため交感神経が興奮すると、筋肉の緊張がおこると共に
血管も収縮し血流障害もおこります。
鍼治療をおこなうことで筋肉の過緊張にどのような影響があるのか研究した論文があります。
鍼を約6mmの深さに入れ、上下動1‐2mm、1Hzの電気鍼の刺激を
加えたところ筋肉の硬さを表す数値に
明らかな低下がみられ、筋肉が軟らかくなったこと。(2
又、マイクロニューログラムという機械による測定では
鍼刺激で筋肉への交感神経活動がおさえられる
ことが報告されています。(3
こうした報告に加え、鍼刺激によって
CGRP(キカルシトニン関連ペプチド)という
筋肉の血管をひろげてくれる物質が
放出されることも報告されています。(4
これらの働きにより筋緊張がほぐれ、筋疲労が改善されるものと考えられます。
肩こりもその症状や程度は様々で
ひどい方は日常生活に支障をきたすほどです。
鍼はマッサージではとどかない深い層の筋肉までとどき、ほぐすことができます。
たかが肩こりとガマンせず、ケアをしてあげることも大切です。
参考文献
1)西條一止、熊澤孝朗監修:鍼灸臨床の科学、医歯薬出版、2001.
2)佐々木和郎:圧弾性測定システム(CES)の開発による硬結の硬さ測定、全日本鍼灸学会雑誌
1991;41(2):251-253.
3)黒野百合子:心拍出量および筋交感神経活動に及ぼす鍼通電刺激の影響、明治鍼灸医学、
2001;29:21-33.
4)野口栄太郎、小林聡ら:鍼通電刺激によるラット骨格筋血流増加反応の神経調節機序、自
律神経、1999;36:56-64.