日本の産業競争力と特許審査官数とは関係ないょ | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…


テーマ:
激減する日本の特許審査官 米中韓との格差広がる懸念
2013.2.18  Sankei Biz
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/130218/cpd1302180503000-n1.htm

>産業競争力を高めるには活発な研究開発投資とともにそこから生まれる発明・技術を特許化するための高い信頼性と能力を備えた特許審査官の存在が重要となる。だが日本は逆の方向へ進みつつある。


…だそうだ。が、私はそうは思わない。
どの点を「そうは思わない」のかというと、「産業競争力を高めるには(中略)高い信頼性と能力を備えた特許審査官の存在が重要となる」という理屈についてだ。


日本が、高い産業競争力を持っていた時代に、日本の特許庁では、高い信頼性と能力を備えた特許審査官が存在していたか、というと、申し訳ないが、決してそんなことはない。たぶん、今の方がよほど審査官の素頭はよいし、実務能力も高いと思う。

これが最強の証拠である。ある国の産業競争力と、その国の特許審査官の能力とは関係ない。


日本の特許出願数は、2001年の43万9千件をピークに下がり続け、10年で約3割減となった。まだ下げ止まらない。それより10年以上遅延して、特許審査官が「今年末を境に減少に転じ」る。それでいいのだと思う。仕事が減っているのだから。減り始めるのが遅すぎるくらいのものだ。これ、審査官を増やしたら、出願件数が増える…ことは絶対にない。

日本企業でさえ日本の特許出願に価値を見出せない状況になってきているのである。そんなことだから、日本の特許出願が減って当然だし、それに呼応して審査官の減員をするのは自然なことだ。審査官の減員が進んで困るのは、たぶん審査官をやっている人たちだけではないかと思う。


何ゆえに、日本の特許出願の人気が落ちているのか?日本国特許庁の審査能力が落ちたからでも、日本企業の産業競争力が落ちたからでもない。世界における日本国の“市場”としての競争力が落ちたからだ。米国、中国、欧州に比べて、日本国の市場としての価値はいかほどのものなのだろう?直感的に判断して、独断的に書いてしまうけれども、米国、中国、欧州に比べ日本国の市場としての価値は格段に低い。市場価値が低ければ、そこで使われる独占・排他的権利としての特許権の価値も低くなる。だから、日本企業であっても、日本の特許出願をしなくなってきているのである。

市場価値と特許出願とは大いに関係がある。市場価値が高くなっていかなければ、特許出願は増えず、したがって審査官も増やす必要が無い。逆に、市場価値が高くなっていけば、中国のように特許出願は増え、したがって審査官を増やす必要がでてくる。

「アベノミクス」が異常に効いて、日本の株価が上がりっぱなしの昨今であるが、これがバブルではなく本物であったなら、日本の市場価値は高まり、特許出願も増えていき、審査官の増員も必要になってくるかもしれない。


しかし、日本国が注力するべき点はそこには無い、と私は思っている。日本国の産業競争力を上げるためには、日本企業の産業競争力を上げる必要がある(決して、審査官増員ではない)。日本の産業競争力とは、日本企業の産業競争力の総和と考えてよいだろう。日本企業の産業競争力を上げるためには、市場価値の低い日本でどのような特許を生成するのかを考えるのではなく、日本企業が世界の市場価値の高い場所で強力な特許を生成するのに日本国がいかに協力できるかを考えるべきだ。

どのような協力が有効であろうか?私は、英語による出願、英語ベースでの審査の実現をお勧めする。

現状は、日本では日本語で特許権を取得する必要がある。これをやめて、外国(米国、中国、欧州、その他の国々)への出願展開を容易にし、翻訳にかかるコストと品質劣化を防止できるよう、日本出願を英語でおこなうことを認め、そのまま英語で特許権を取得できる道を開くのだ。

これを実現するために、英語が得意な審査官を増員する必要がある。英語で出願し、英語で審査するのだから、極端に言えば日本語ができなくてもよい。国籍も問わなくてよい。英語ができる技術系の皆さんを審査官として採用し、英語ベースでの審査が日本で可能なようにもっていく。

同時に、出願人側(代理人を含む)も、英語で明細書を書く能力を持つ必要がでてくる。これができる弁理士も少数ながら、数は増えてきていると思う。日本出願を英語でしてもよい状態になれば、彼らの活躍の場は一挙に広がり、英語で明細書を作る能力を獲得する弁理士も増え、日本の特許業界も国際的な産業競争力を増大させるだろう。

これができれば、日本の特許行政は、日本企業の産業競争力の増大に大いに貢献できると思う。そして、そのために英語で審査できる審査官を増員することには、大いなる意義が出てくると思う。米国特許庁から引き抜いてもよいから、英語で審査できる人材をどんどん採用していこう。

ある特許庁幹部OBの別の視点である、「日本で蓄積された審査ノウハウや情報を新興諸国へ提供すべきだ。各国の審査や審査官養成を支援して関係を強化することは、長い目で見てわが国発の特許の保護、活用、産業競争力強化につながる。審査官を積極的に海外派遣すべきだ」というのは、私も同意する。このためにも、英語の得意な審査官は大いに活躍できるだろう。


日本の産業競争力を上げるためには、英語による出願を認め、英語の得意な審査官の増員を図るべし!逆に言うと、これができないなら、日本企業の産業競争力の助けにならない日本の特許出願は不要であり、日本特許庁の審査官は減員していくのが正しい。



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