粘膜は外敵と戦う主戦場

 

粘膜上皮は実にさまざまな機能を持っており、

それは あらゆる意味で生命作用の最前線とでもいうべき作用を担っているということです。

たとえば、肺の内部にある呼吸器機能(肺胞)粘膜は、

酸素の取り入れそのものを行っているし、

胃腸の内部にある消化管粘膜は栄養分の吸収を行っていますが、これらの粘膜は、

いずれも正命の維持に直結した役割を担っているわけです。

 

肺胞の粘膜は広げると 60平方メートルになるし、

消化管粘膜は広げると 実に400平方メートルにもなります。

そのどちらも、外界と直接接触する部分ですから、

細菌・ウイルスなどの外敵からの攻撃に常にさらされています。

その攻撃から身を守るシステムとして、

体内粘膜はそれ自体が免疫装置になっていて、粘膜表面に白血球、マクロファージ、B細胞、T細胞、

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)インターフェロン、インターロイキン、免疫グロブリンなどなど、

ありとあらゆる種類の免疫細胞やそこで作られる物質が出てきて、そこを外敵と免疫細胞との戦いの主戦場に変えてしまうのです。

いわば粘膜は全体として人体最大の免疫機構として働いているので、粘膜免疫学という学問世界が成立しているくらいです。

 

肺がんや消化器がんになると、生命維持の根幹である

呼吸作用や栄養吸収作用が脅かされますが、

それを救おうと抗がん剤を投与すると、もっと恐ろしいことになります。

がんは腫瘍ができた局所の作用を脅かすだけですが、

抗がん剤の作用は人間の生命の中核といってもいい骨髄を襲います。

骨髄には造血幹細胞があって人間の血液を造りつづけています。赤血球白血球、血小板などあらゆる血液成分が骨髄で造られています。

赤血球は寿命が120日 白血球は種類がたくさんありそれぞれ寿命が違いますが一番多い(40~70%)好中球はわずか2~3日の寿命です。

他の血液成分も寿命が短いので、骨髄の造血機能がストップすると、人間はすぐに生きていけなくなります。人間が生きるということは、血液を休みなく造りつづけることとイコールなのです。

 

                                                                                       がん生と死の謎に挑む 立花隆 から引用