地方公営企業の基本モデルは水道事業 管理者には専門性より公正で幅広い経営能力を期待

 現在市議会で審議中の病院関連議案のなかの新しく病院事業管理者を置くための条例改正と補正予算案。そして、すでに制度化されているが今は不在の病院整備事業顧問を新たに置くための報酬の予算案が含まれています。これら2人の設置はいずれも7月1日からとなっている。

 これらの新設にはこれから述べるように様々の問題があります。

 ひとつは、すでに紹介し、その後新聞報道もされているように病院事業管理者の給与等が年間2500万円を越えるという異例に高額であること。「野洲病院事業管理者の年間人件費は2500万円 市長が見通し」(中日新聞2022年6月16日)

 また、市長が医療の専門家を置こうとしていることも問題。医療の専門家が悪いわけではないが、市立病院の現状から見て、あえて医療の専門家を置く必要性はない。院長はじめ医療の専門家は整っている。病院経営には医療・保険制度、財務、人事など多様な専門性が必要。地方公営企業の基本モデルは水道事業であって、管理者には特別な専門性よりは、公正で幅広い経営能力を期待している。

病院事業管理者の新設は百害あって一利なし

 このように、野洲市の場合は、そもそも新設する必要性はなく、むしろ本気で新病院を建てる気なら市長が病院事業管理者を兼ねるべき。まして、病院職員が働いて得た収入から2500万円という法外な額を支出するなどもってのほか?加えて、病院と市組織内の指揮命令系統の混乱を招く弊害も予想される。百害あって一利なし。

 身近な例として、県立総合病院の場合は小児と精神を合わせた3つの病院事業管理者として県の事務系の部長退職者をあてている。また、病床数野洲病院の約2倍の公立甲賀病院の場合も地方独立行政法人化するまでは、構成市である甲賀市、湖南市のいずれかの市長が兼ねていた。

 事業管理者7月1日から常勤であれば、荒業で野洲病院副院長で会計年度職員の前川聡氏の任命しかない

 その他の重要な問題として、この病院関連議案の採決は今定例会の閉会日6月28日午後遅く。仮に議案が可決されて就任することになれば、7月1日の両者の就任日まで2日しかない。当然その間に人選や依頼・内諾等の手続きを行う時間的余裕はない。特に、病院事業管理者の場合は7月1日から常勤なので、議案が可決されないリスクもあるので、常勤職をあらかじめ確保することは、通常なら不可能。これを可能にできるのは神業しかない。

 ということで、この病院事業管理者の人事はすでに市長の権限下にある職員を任命するしかない。というより、それを前提にしてあらかじめ職員を採用してあることになる。これは、神業でなく、まさに荒業。

 そして、この人物とは、事の筋から客観的に見て、以前何度か紹介した、今年4月から市立野洲病院の副院長として新規採用された会計年度職員の前川聡氏になる。滋賀医科大学内科学講座(糖尿病内分泌)の前教授。

顧問は事業管理者新設であれば一層不要 管理者が信頼に足りない証になる 無茶苦茶 

 次に病院整備事業顧問。元々この職は、簡単に言えば、市が市立病院を持つ前に、院長予定者を意見を聞くために設置したもの。市立病院になってからも院長不在時に一時的に置いた。ところが、すでに市立病院が開院し院長はじめ各専門分野の病院スタッフがいるなかで、市長のための顧問を置く必要はない。まして、今回、病院事業管理者を新設しようとするのであれば、一層不要。逆に見れば、この病院事業管理者が信頼するの足りないということをあらかじめ、示すことになる。端的に言って無茶苦茶。

 これは、「市長は自分で考えず、どこかの指令で動いているように思えてならない。」(読売新聞2022年6月19日)と6月18日の市民団体の会議で東郷議員が述べたことの表れ。なお、東郷議員はこの後、「今議会で歯止めをかける努力をする」(読売新聞)と言ったことになっているが、努力はもちろん、その結果としてきっちり歯止めをかけてほしい。

顧問人事の実質的手続きは終了 人選のヒントは稲垣議員の質問

 ところで、顧問の人事。これも7月1日からの就任。非常勤だからその日から出勤する必要はないが、その日付で正式に委嘱するためには2日間しかない。ということは、議案の可決を見越して、すでに実質的な手続きは終わっているはず。

 この人選のヒントは、稲垣議員が質問で加入を求める趣旨の質問を執拗に行った地域医療連携推進法。市長も、益川議員の質問で、市長自らも関係したこの法人の理事会等での意思決定手続きの問題が明らかになったにもかかわらず、加入に前向きな意向を表明している。顧問の人選はこの法人から誰か、というより、実際のところ、事の成り行きからすると、法人の実質的な運営者である柏木厚典理事が想定される。

 益川議員の質問でこの法人の理事会等の意思決定手続きの問題が議会で明らかになったにもかかわらず、そこから顧問を招く?すでに透明性と規律を失った市政運営が一層悪化することが心配される。いや、栢木市長はすでにその法人からの「指令で動いている」結果が現状として現れているのか?

 いずれにしろ、審議中の補正予算案が可決されれば、後の人選と委嘱は、市長の権限なので、仕方がない。

市民には緊縮で市長自らは放漫 顧問報酬は病院事業会計で計上すべきのもの 滋賀県庁大丈夫か?  

 最後に補正予算案。まず、これまで見てきたように、事業管理者や顧問の設置に伴う新たな無駄な支出。ここからは、市民に対しては県からの派遣職員を先頭に立て緊縮を強要し、市長自らは放漫を満喫する姿勢。

 そしてもうひとつは、細かいことになりますが、財政制度の問題。6月19日のブログで「病院整備基本計画修正業務委託料」400万円が病院事業会計の補正予算案に計上されていることの問題を紹介しました。あの時は、体育館病院の前提からすれば一般会計予算案で計上すべきもの。

 ところが、今回の顧問の報酬は逆。議案では一般会計予算案で計上されているが、病院整備事業顧問である限りは病院事業会計で計上されるべきのもの。そして、顧問は病院事業管理者の権限下に置かれるべきもので病院事業管理者の兼務を解く市長とは繋がらない。議案は当然県から派遣されている副市長の総監修のもとに作成されているはずであるが、ここでも滋賀県庁大丈夫かと心配が増す。

村田議員の質問から「入院患者さんのメンタル面には影響感じます。」のコメントが

 余談になりますが、先の本会議での質問で、体育館病院の地元の神職である村田議員が、強い北風が吹き付けることや隣接の「照子墓地」のことに触れたようです。「市長与党会派」の議員であるのに、体育館病院に否定的な趣の質問で驚いた市民もいたようです。

 私は、その部分を傍聴し逃しましたが、そのことを知った市民が、先ほどメールで写真を送ってくれたので紹介します。「ホントに墓地の横という感じで、入院患者さんのメンタル面には影響感じます。」とのコメントが添えられていました。