5年間市民や専門家の議論を重ねた構想が市民の意見も聞かず一瞬に変更!

 8月24日開会の第3回市議会定例会の議案が議員や報道機関などに配布・公開されています。8月18日午前の議会運営委員会で認められたからです。そこには、その前日17日の都市基盤整備特別委員会で市長が説明した、Aブロックでの複合商業施設誘致のための予算、約430万円が補正予算案として入っている。あわせて、多分、住民訴訟の取り下げに市長が先ごろ独自判断で同意したことによって発生する弁護士費用も。

 約430万円の補正予算案が議案として認められたことは、厳密に言えば、駅南口周辺整備構想の見直しを議会が認めたことになる。Aブロックには市民病院でなく、複合商業施設を誘致することを。少なくとも、市長と市職員は、構想を見直したと認識していることになる。市有地の買収の議論から数えれば構想策定まで約5年間。市民や専門家、関係機関、さらには若い世代や学生たちの議論を重ねて策定された構想。これでは、その構想が一瞬のうちに市民の意見も聞かずに変えられたことになる。

複合商業施設前提の予算を認めることは議会までもが市民を置き去りにすることになる

 次の段階として、万一議会がこの予算案を認めた場合、どのようになり、それがどのような意味を持つことになるのか?

 まずどのようになるかは言うまでもないこと。予算案が可決されれば、それを財源にして、市長はAブロックを対象とするサウンディングなるものの手続きをはじめ、それが終わってから予定されている事業者公募のための資料作成の委託を行う。このことは、単なる事業の実施にすぎません。

 しかし、それが意味するところは極めて重大。なぜなら、「野洲市病院事業の設置等に関する条例」で病院に場所と定められている場所に、法令に反して、複合商業施設を誘致することを前提とした事業の予算を議会が認めることになるからです。

 栢木市長が現行の構想や計画、法令、さらには自分の公約までも覆して、強引に事を進めていくことを阻止できないばかりか、議会までもが市民を置き去りにすることになる。

市民や専門家でなく、外部コンサルをパートナーにして病院事業を密室で進めようとしている

 今後、駅前Bブロック病院の基本計画等の策定が、先日候補として選定された業者と正式契約が結ばれ動き出す。もしそうであれば、議会や市民の合意が得られていないなかでの、まさに見切り発車。先日の公開プレゼンテーションを傍聴したり、市ホームページに公開されている提案書の出来を見て納得した人は多くない。委員会での議員からの指摘に対して、市長が自分の責任であると詫びを言ったほどの出来。

 しかし、馬野政策監は提案書の内容は問題でない。今後事業を進めていく「パートナー」を選ぶのだと主張して、市長顔負けの強引さで押し切った。市長も、藁をも掴む思いで、「1企業体でも参加があり、感謝している」と、それにすがった。

 なお、この「パートナー」という言葉、委員会答弁を聞いたときは大いに違和感がありました。ところが、先に書いたように、市がコンストラクションマネジメント企業を選定したことで、計画等を策定することよりも、相談相手、あるいは仕切り役の確保を目的にしている。市民や市に協力しようとしてくれる専門家でなく、外部のコンサルタントをパートナー(相手)にして事業を密室で進めようとしていることがわかりました。

 加えて、駐車場の確保がまともに出来ていないことも大きな欠陥。これでは、市民不在は言うまでもなく、市民が期待し、喜ばれる病院は覚束ない。

官民連携事業は民頼みではできない 官民連携事業でマンション? スキーム成り立たない 

 あたらためて、Aブロックでの複合商業施設の問題を順不同にあげます。

①官民連携事業でやると言っても、「民」がアイディアと資金のすべてを出し、リスクを負担して事業をやってくれるわけではない。市長はそのようなイメージで説明し、質問で突っ込まれると、参加する企業はそのことを前提に参加すると、鶏と卵の論でかわしてきている。いつまでもそれでは通用しない。遅かれ早かれ皮がはがれる。「官」である市が貴重な市有地を提供したうえに、例示されている図書館などの公共施設部分に相当な負担を強いられる。ところで、十分な図書館本館があるのに、病院を節約して駅前にどれほどの図書館をつくるつもりなのか?

②Aブロック5千㎡強の土地に、千㎡ほどの市民広場と相当の駐車場を確保する前提では、複合商業施設の立地は面積的に厳しい。

③複合商業施設を「にぎわいを創出し税収を生み出す場」と夢のような話を持ち出しているが、一般的に税収増は簡単でないし、商業では税収増は厳しい。

④先日の委員会の答弁では駐車場を機能ごとにバラバラに設置すると答えて議員からひんしゅくを買っていた。複合施設というのであれ、現段階で、コンセプトが明確であるべき。部長答弁のような何でも業者からの提案待ちでは解決しない。

⑤「野洲市病院事業の設置等に関する条例」で病院の場所として定められている。条例改正もしないで、それに違反して公式に市は事業を進めるのか?

⑥病院事業用地として億円単位の起債がかかっている。その償還の見込みをあらかじめ立てないで、サウンディングや委託事業に取り掛かるのか?

⑦市長はマンション単体はないが複合のなかにはマンションが含まれると何度か答弁した。官民連携事業で取組むとしているが、そうであれば土地は市有地のままであり、事業も30年等と期限を切って行うことになる。そんな事業に分譲マンションが組み込めるのか?万一、賃貸であったとしても、事業用資産と居住用資産では扱いが違う。事業スキームが成り立たないのではないか?

問題は山とある 市長は選挙で信任受けたが、政策の信任受けてない ゆとりをもって取り掛かったほうが良い

 とりあえず、たちまち思いつくだけでも、課題・問題が山とあります。これらのことをあらかじめ検討して明らかにしたうえで進めないと、そう遠くない先に行き詰ってしまう。

 栢木市長は選挙において市長としての信任は受けた。しかし、それ以降の議会との関係やその決議の連発を見ていると、重要な政策・施策での信任を受けないで、強引に進めてきているだけ。それでは、市民と市の展望は開けない。

 先の委員会では、何もかも今後民間が解決してくれるような市長と部長の甘い答弁、というよりいずれも弁解。しかし、今ないものは将来にもない。幻想を廃して、議会、市民とともに地に足をつけて、ゆとりをもって取り掛かったほうが良い。