ワクチン接種の混乱が拡大 あってはならない社会現象が出現

 新型コロナウイルス感染の拡大と医療崩壊の進行に加え、ワクチン接種の混乱が拡大しています。社会現象とまでいってよい状態になってきている。身近なところでも市役所から案内が来て手続を試みたが出来ていないという話は当たり前。報道では、連日各地で混乱の事例が報道されています。十分な情報をもたない高齢者が何度も電話したり、心配で市役所に出かけたりしている状況はあってはならないこと。

ワクチン接種の混乱拡大は新型コロナウイルス感染拡大とは別問題 

 緊急事態宣言を出して人流抑制策をとっても顕著な効果が現れない。当面の頼みの綱はワクチン接種になっています。そのワクチン接種で接種そのものの問題もさることながら、その入口の申込受付の段階で大きな混乱が生じている。

 ワクチン接種は感染拡大防止と平常の生活と社会経済活動を取り戻すための対策であり、双方関連はある。しかし、いま全国で起こっている接種に絡む混乱、不満、そして高齢者と自治体職員の心労は、新型コロナウイルス感染の拡大とは切り離して考えるべきもの。単純に事務事業の進め方の問題であり、別問題です。

このようなことがまかり通るのは自治体の場合競争原理が働かないから 問題は国の事業の進め方 

 例えていえば、人気商品を十分な量を用意しないで大量のチラシを配っていきなり開店する。仕込み前に宣伝し開店するのと同じ。そのようなことをすれば、店頭に長蛇の列ができ、混乱が起こり、不満は噴出する。場合によっては、けが人も出る。一番割りを食うのはそのなかでも弱い立場の人たちです。

 対象者全員分のワクチン量がないにもかかわらず、対象者全員に案内状を送付し、先着順に受付をするという、いま野洲市も含め多くの自治体でやっている手続きは、まさにこのやり方に近い。民間企業なら、信用を無くし、すぐにそっぽを向かれ、経営が成り立たない。ところが、ワクチン接種の場合は市民と担当職員だけが混乱の被害を被って、企業体としての自治体には響かない。このようなことがまかり通るのは競争が働いていないからです。

 しかし、本当の問題は自治体にはありません。国のワクチン接種事業の進め方の問題。自治体はそれに翻弄されている。 

このままではコロナ禍に加え、政治と社会への信頼が崩れていく 自衛隊がLINEで受付?

 このような状況で市民とすれば、自分のまちの役所を非難したくなります。それも当然ではありますが、責任の大本は上述のとおり政府にあります。しかし、肝心の責任主体である政府は自治体に任せてあるといって涼しい顔。それどころか、接種を3月から始めるとか。7月中に終えるとかの情報を拡散し、逆に混乱を煽っている始末。ここに来てようやく責任に気が付きだしたのか、東京と大阪で自衛隊がワクチン接種を行うという異例な事態に。余談になりますが、予約受付を通信アプリのLINEで行うという今朝の報道を聞いて驚きました。

 なぜこのようなことが生じるのか。もちろ、このような不毛な事態を止めるためにはその大本となる原因を明らかにする必要があります。しかし、そのような迂遠なことをやるより、仕込み前の宣伝を止めるという、商いの道の基本に店主が立ち戻ればよいだけです。そうしないと、このままではコロナ禍に加え、本来なくても良い混乱と被害が増大し、政治への、そして社会への信頼が崩れていきます。