庭先の遅い紅葉と咲き出した山茶花が秋の終わりを告げています。

O市の一律5万円給付公約とよく似ているが

最近何度か市外の知人と懇談の機会がありました。話題は、新型コロナウイルス、国政、趣味の話などさまざまでしたが、ひとつ共通していたのは、野洲市の病院問題です。

新市長が、実施設計まで進んでいた駅前の新病院計画を中止して、現市立病院敷地において病院運営を続けながら、駅前の計画と同規模の病院を半額で建替えるという大胆な公約を掲げて当選し、その手腕なり、動向に関心があるからです。また、就任当日に早々、駅前病院の設計業務委託の中止を前提に業者に通知を出すという、勇ましさに反して、その後の記者会見等の報道では、素人だからわからない、これから調査検討する、郊外に建設の可能性もありなどと、及び腰になり、市民の期待を裏切る発言が報じられているからです。

話題のなかでは、同じ期日で行われた愛知県O市の市長選挙で、すべての市民に一律5万円を給付する公約を掲げて当選した市長の場合との比較なども出ました。通常だと無理だと考えられる公約を掲げて当選したという点ではよく似ています。

現病院敷地での半額建替え公約と一律5万円給付公約との違い

O市の件に関しては、既に一律5万円を給付の議案が市議会で反対多数で否決され、市長は公約としていた年内給付を断念する考えを示したことが報道されていますからひとまずの結果は出ています。ただし、新たな提案を行う意向は示されているようです。そうでなければ、通常は収まらないでしょう。

他方、野洲市の病院に関しては、現在市議会の定例会の開会中ですが、私の知る限りでは、まだなんの関連議案も提案されていません。このような進ちょく状況の違いはありますが、2つのケースの違いについて、懇談の場での議論をもとに紹介しながら、野洲市の病院問題を整理してみます。

一律5万円給付の場合は市長は議案提案したが議会が否決

まず、O市の一律5万円給付の場合は、市長は公約どおり早速議会に議案を提案したが、議会が否決した。悪いのは市長ではなく、否決した議会が悪いのだという論が成り立ちます。しかし、これに対しては、財政調整基金の全額近くを取り崩すという無理な提案だから反対したと報道されており、そうであれば議会・議員側の論理にも正当性があります。これ以上深追いしませんが、この場合、それなら、なぜ、市民の過半数は一律5万円給付に賛成したのかという疑問が残ります。

野洲市の場合 公約どおりであれば可決の可能性 議案が出せるかどうかが問題

他方、野洲市の病院の場合、公約どおりの現市立病院敷地において病院運営を続けながら、駅前の計画と同規模の病院を半額で建替えるための議案が明確に提案されるとしたら、推測する限り、O市の場合と異なって、議会・議員側は反対する理由を見出せないと思います。ただし、野洲市の場合は、それ以前に公約どおりの議案が出せるかどうかが問題となります。

市民にとって給付とサービス提供の違い もうひとつは職員への影響 野洲市の場合は重大

その他の違いでみれば、一律5万円給付の場合は、野洲市の病院建設費に近い巨額な財政支出ですが、政策としては単純な現金給付です。一方、野洲市の場合は、現在市立病院で市民に提供されている医療サービスが継続できるかという重大な問題がかかわってきます。

もうひとつ問題となる違いは、5万円給付の場合は関わる職員は通常の市職員であり、実質的な影響は大きくありません。一方、野洲市の場合は、病院事業で働いている200名を超える職員の立場がかかる深刻な問題です。

現在開会中の市議会定例会の本会議での質問は今週からです。冒頭に紹介した懇談の場でも、市長は気楽に考えているのではないかとかいった話も出ていました。しかし、就任当日に業務委託の中止を前提に業者に通知を出す素早さは本物です。いずれにしても、このままグズグズして、この議会での議論でなんらかの展望が出されなければ、事態は危険さを増します。