『形骸』 | 素の素

『形骸』



言いたいことなんてもう何もないのに
それでもただここにこうして立っている

すると誰かがやってきて
呆れたり
面白がったり
頼ってくれたり
あるいはひょっこり顔を出して
映えもしない写真を一緒に撮ったり
したんだ

詩の一節を
あるいは一編のすべてを
括弧にして抜き去ってしまったなら
誰かが好き勝手に何かを投影して
言葉を埋めたりそのままにしたり
するんだろう

枠さえいずれ朽ちゆく中で
今まであったものがなくなると
それは新しくあるということが始まるのだ