ジオターゲティング
Sat, May 27, 2006 16:20:08

宇宙が透ける程に

テーマ:ちいさいはなし

天気がいいので、知ってる人が誰もいない遠くの公園へ行ってみることにした。


わざわざ電車を乗り継いで行ったこともない公園に行く。


乗ったこともない電車で立ち位置に迷いながら景色を追ってみる。
普段とは違う乗客の種類の違いに戸惑いながら溶け込もうとしてみる。


公園のある最寄の駅に着き、改札を出てすぐのコンビニで地図を立ち読みしておにぎりを買う。


憶えたての記憶にしたがってしばらく歩くと都会にふさわしくない黒い森が現れた。


黒い森はすなわち目的の公園で、案内版を見るととてつもなく広いことがわかった。
(公園から連想するイメージを変える必要がある)


おにぎりのある安心感から入り口脇で自転車を借り、公園の一番奥まで走ることにした。


何年かぶりに自転車に乗り、ひと漕ぎ、ふた漕ぎするとすぐにペダルが軽くなった。


おもしろいように速度が上がる。
カップルや家族連れで自転車に乗っている人たちを瞬く間に抜き去り、前のめりの立ち漕ぎで無心に風を切る。



息切れしてきた頃に公園の一番奥にたどり着いた。

公園の一番奥はその場所にふさわしいようなたたずまいで、木立に囲まれたちいさな芝生の広場になっていた。


(誰もいない)


自転車を倒し、芝生の中心に寝転がってみた。


目を閉じて空の色を想像する。


過去の記憶を検索して初夏の空を思い出す。


(眼球を覆うまぶたが太陽の光を透かして赤く見える)


そして目を開ける。


眩しくて何も見えない。


薄目で目を慣らすとだんだんと空の色が現れてきた。


薄い水色だ。いや、水色というよりも白だった。


(がっかりだ)


そもそも都会に群青色の空があるはずは無い。


(群青色の空を願うほど努力してここへはきていないのにがっかりするとは)


しばらく木立に切り取られた丸くて白い空を見上げていた。


ぼんやりといろいろなことを考えた。


ふと、おにぎりを食べたら泣けるかな、と思った。


仰向けになりながらおにぎりを口にする。


乾いた海苔が口の中にくっつくだけで他に高ぶるものは何もなかった。


自然に泣ける程、何かを為したわけではないだろう。


おにぎりを食べてその幸せを味わえる程、自分をつらい目には遭わせていないということだ。


今日以降、ただ食べることで言えば、何万回か繰り返して死んで行く生に、自ら泣く価値を与えることができるだろうか。


生きてこられたことに感謝して泣けないことは本当の生を生きていない罰だろう。




いつか目を開けたら、群青色の空がそこにあって、そして自然に泣ける日を。



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