よろずクリニックのブログ

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面白い医療ネタ、ためになりそうな情報を発信していこうと思います。

先日楽天メディカルが頭頚部がんに対し、IR700とアービタックス(抗EGFR抗体)名称セツキシマブサロタロカンナトリウム(製品名アキャルックス)、完全に舌を噛みちぎることを前提とした名称の薬と治療機器が頭頚部がんに対して承認されましたが、すでに当院で観察研究として実施しているICGリポソームによる光がん免疫療法との違いなどを今回は解説したいと思います。(倫理審査IRB番号18000005)

 

まずこの治療は薬剤をどのようにがんにとどけるか=ドラッグデリバリーシステム=DDSが重要です。

 

光を照射しようにもそこに薬剤がなければ意味がないですから。

 

そこで楽天メディカルのアキャルックスは抗EGFR抗体(上皮増殖因子受容体)へ届くように設計されたものに光感作物質がついていて690-700nmの波長のレーザー光を当てることでがんの細胞膜を破壊し、がん細胞を破壊するだけでなく免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を誘発することで免疫機能全体を活性化し再発抑制やほかの転移巣までをターゲットとする。この原理はすべての光がん免疫療法に当てはまります。

 

抗EGFR抗体とIR700を用いた光がん免疫療法の良さ選択的にがんにつきやすいことIR700による強力な抗がん作用です。

デメリット抗EGFR抗体に拒否反応がでる患者には使えないこと抗EGFR抗体が結合しないがんには適応にならないということ。抗EGFR抗体に効果は一時的で獲得耐性を生じることがあることなど。

もう一つ上げるならIR700による光線力学作用が強力すぎる場合があるということです。

 

このような光線力学療法(PDT)は結構前から開発が進んでいましたが、薬剤を効率よく患部へ届けるDDSの進化とともにその治療効果や精度を高めていっています。

 

当院が使用している光感作物質はICGリポソームですが、この薬剤の特徴はICG(インドシアニングリーン)を100nmくらいに高分子化し、前田浩先生の提唱されたEPR効果を用いてDDS(ドラッグデリバリー)をします。

このサイズくらいが最もがんの新生血管に取り込まれやすいようです。

 

楽天メディカルのイルミノックスはがんのEGFR抗体へ結合する

メリット:選択性が高い

デメリット:抗体医薬により結合させるので汎用性がない

 

EPR効果によるDDS

メリット:汎用性が高い。

デメリット:血流が乏しいがん細胞には届きにくい。どのくらいの時間で集積するのかデータに乏しい。

 

IR700のメリット:強力な腫瘍破壊作用

デメリット:時に強力すぎる場合があり穿孔や出血のリスクがある。

 

ICGのメリット:検査薬としても使用されており安全性が高い

デメリット:IR700へ比べると抗腫瘍効果が弱くさらなる改良が必要

 

同様の原理を使った前田浩先生によるPTHP(ポリマーピラルビシン)関してはこちらの記事を参照ください。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50647?page=3

 

 

#EPR効果
腫瘍周囲の新生血管は不完全であり,血管内皮細胞の間に隙間が存在する.そのため,正常の血管は透過しない数百nmの高分子薬剤が,腫瘍では血管壁を抜けて組織中へと透過する(enhanced permeability).また,腫瘍ではリンパ組織も成熟していないため,組織中の異物を排除することができず,結果として,血中から漏れだした高分子薬剤は腫瘍組織中に貯留する(enhanced retention).このような,高分子薬剤が腫瘍へ集積する特性をEPR(enhanced permeability and retention)効果という.

このEPR効果を用いた薬剤では最近切除不能膵がんへの適応が承認されたオニバイドという抗がん剤がありますが、この薬剤はまさに110nmにリポソーム加工されたイリノテカンでEPR効果によって膵臓がんへ届くように設計されています。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/202007/566228.html

 

 

現在当院で使用しているICGリポソームはインドシアニングリーン(ICG)をリン脂質(リポソーム)でコーティングし腫瘍への集積性を高めている薬剤になります。

 

 

このICG(インドシアニングリーン)を使うメリットはインドシアニングリーン(ICG)は波長600nmから800nmを越す広い波長範囲で光を吸収し635nm付近の波長では一重項酸素を発生し腫瘍壊死や血管障害が認められ、820nm付近の波長では高い温熱効果を発揮することが分かっています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslsm/28/2/28_2_122/_article/-char/ja/

 

 

当院ではさらにこのICGはタラポルフィンを融合した薬剤を使ったり、IR710やIR780といったさらに新しい光感受性物質を用いて観察研究を行っています。

Journal of personnalized mediceineへアクセプトされた論文はこちら。

 

治療の詳細はこちらをごらんください。

 

そして当院のPDT(光がん治療用)の機械はその出力や波長異なる機器(現在5台)取り揃え最高の治療成績がでるように日々研鑽を積んでいます。

病院の画像のようです

いままで副作用はほとんど確認されておらず、こういった治療にてがんの縮小効果がでてくれば負担の少ない最高のがん治療となると確信しています。