埼玉に住んでいる十数年来の親友から、SOSが届きました。
「らいらいちゃん、一生のお願い」
彼女の住む地域も、東日本大震災の被害に遭いました。
ここ数年、メニエール氏病でずっとめまいに苦しみ、寝たり起きたりの生活をしていた彼女は、余震や地震の心労から、起きあがれないほど具合が悪くなってしまったのです。
困ったことに、いつも助けてくれる優しいご主人は非常事態とあって、朝早くから夜遅くまで会社に詰めっぱなし。
自閉症の息子さんは、地震のストレスで感情のコントロールが効かなくなってしまい、目離しの出来ない状態。
近所に住んでいる、88歳になる父親の事も気にかかります。
その上、彼女の家は計画停電の地域に入っているのです・・・
さらに彼女を困らせたのは、お店で物が買えないことでした。
地域のどのお店も品薄で、入店するだけで2時間・3時間待ち。
しかも品物は棚に何もなく、2時間待ってミネラルウォーターが2本だけ手に入るような状態だとか・・・
病院でさえタクシーで行きかねる彼女には、とても無理な話です。
彼女の「一生のお願い」とは、子供さんの見たいTVを録画することと、「もしランタンと電池が売っているなら送って欲しい」というささやかなものでした。
どんなに大変な時でも、愚痴一つ言わず「私より大変な人はもっと沢山いるんだから、大したことないよ」と明るく笑う前向きな彼女を私は尊敬しています。
困ったときや凹んだ時はいつも相談にのってもらっていた彼女から、そんな弱気な言葉を聞いたのは初めてのことでした。
ところが。
安請け合いはしたものの、いざホームセンターのキャンプ用品コーナーに行ってみると、ランタンはおろか懐中電灯まで全部売り切れ。
今回の地震で、いざという時に備えて誰も皆、慌てて購入したのでしょう・・・
単2や単3電池はあるけれど、単1電池もなかなか揃いません。
何軒も駆け回って、やっと乾電池使用の携帯用ミニ電灯を手に入れることが出来ました。
「他に欲しいものはない」と聞いてみると、パックのご飯やカップ麺というリクエストがあったので、段ボール2箱にどっさり詰めて送りました。
「本当に助かった。ありがとう、ありがとう」
彼女は何度も何度も繰り返していたけれど、私は大好きな彼女の役に立てることが心の底から嬉しかったのです。
本当は、救われたのは私の方でした。
連日の地震報道を見ていると、自分がこうやっていつも通りの生活をしていることが申し訳なくて心苦しくてたまらなくて。
せめてもの気持ちに、献血をしたり募金をしたりもしたけれど、それでもやっぱり気持ちは重いままで。
けれども、彼女の力になれたことで、ちょっと気持ちが晴れました。
「頼ってくれてありがとう。私に出来ることをさせてくれてありがとう」
お礼を言うのは、私の方です。
とか、言いながら。
「どうか、かかったお金は言ってね」
と言う彼女に対して
「お返しは、次に四国で南海地震が起こった時にお願いするわ」
と、未来の予約までしちゃったチャッカリ者のらいらいでした