こんにちは。
よろこび開運掃除
いしはらとしひろです。
今日のお題は
「村上春樹の小説の主人公は綺麗好き?」
でもテーマに入る前に。
随分と久しぶりの投稿となってしまいました。
前回の記事は3月27日。WBCのことを書いた記事以来になります。
今まで10日くらい間が空いてしまったことは何度かありますが、一か月以上書かなかったなんて初めてです。
この間、何かあったのか?
ええ、ありました。
私の実家の本格的な片づけをしていたのです。
片付け、というよりもほぼ捨てる作業。
捨てて捨てて捨てまくる毎日。
また季節柄掃除の現場の方も忙しく、掃除の現場で動いているか、実家の片づけをしているか、どちらかだったのです。
気力も体力も使い果たしました。
毎日の作業を終えるとバタンキュー。
ブログを書く余裕というものが、精神的にも体力的にも時間的にもありませんでした。
ここまでのことは久々です。
そして、発見も示唆も多いこの一か月でした。
たくさん捨てることで、心も体も変化しました。
このゴミ捨ての話は、近いうちにまとめて書きます。
少々長い話になりそうですから、きっと何度かに分けて書くことになるでしょう。
今日は久々に書く、そのリハビリを兼ねて。
村上春樹さんの小説に現れる、掃除や家事について書きます。
つい先日、村上春樹さんの長編小説「街とその不確かな壁」が刊行されました。
早速読みましたよ!
期待に違わぬ面白さ。良かったです。
発売10日余りで数十万部を売り上げる、いつも通りの売り上げ面での凄さも。
僕は「羊をめぐる冒険」以来のファンなので、かれこれ40年くらい春樹さんの小説を読み続けていることになります。
長編は全部、短編やエッセイは8割くらい読んでいます。
なので、まぁまぁハルキスト、と言ってもよいかと思います。
とはいっても、この文章で村上春樹さんのことや「街とその不確かな壁」のことを批評したり分析したり、ということではありません。
春樹さんの小説の文学的な意味、なんてものも考察いたしません。そういうえらそーなことはどなたかに任せておけばいい。
誰が読んでもわかる、でもなかなかそこには注意を払わないであろう点に着目してみました。
春樹さんの長編小説に出てくる主人公の大半は、綺麗好き。
家事全般、特に料理や掃除をしっかりやっている。
自分の身の回りを清潔に保つことに、結構一生懸命になっている。
そこを少し掘ってみたいと思います。
僕は小説全般好きですから、まぁまぁ読んでいる方だと思います。
でも春樹さんほど、作品の中で料理するところや、日常の清潔に気を使う場面を書く人は、ほかにあまり見当たりません。
もちろん僕が読んでいない小説はごまんとあるので(日本で刊行されている本の数を考えたら圧倒的に多い)、そっちにはそういう掃除や家事の描写が多い小説がたくさん控えている可能性もありますが。
春樹さんの小説に哲学的な考察や、いろいろな解釈を試みる人はたくさんいると思いますが、家事掃除に着目する人はさほどいないのでは?(笑)
春樹さんの小説の主人公たちが、清潔や家事にこだわるのはなぜだろう?
いくつかぱっと思い浮かぶ順にあげてみます。
・春樹さんは自分自身が掃除好き料理好きだから?
・家事や掃除が自分を整えるというのを知っているから?
・自分の小説の風通しを良くするために、登場人物のうちの何人かは清潔を保つようにしている。
・春樹さんが「そういうことにだらしない主人公」を書くことに耐えられない?
実際、汚部屋に暮らす、片付けも掃除も大嫌い、というような主人公はほぼ出てこない気がします。
なぜ春樹さんの小説の主人公は、押しなべて清潔好きなのでしょうか?
春樹さんの長編小説の主人公は、たいてい何らかの事件に巻き込まれます。
まぁ小説全般、そういうものですよね。
どういう形にせよ、日常を逸脱するようなことが起こらないと、物語というのはなかなか起動しないわけで。
小説の中で起きる大変なこと、事件、悩み。
そういうことにできるだけ対処できるように、まずは自分自身をなるべく整える。
大変なことが起きれば、人はぐらつきます。
ああ、どうしよう、どうすればいいんだ。
まぁ当然ですよね。
春樹さんの小説の主人公たちも、おおむね何かに巻き込まれます。
あるいは自らことを起こしてしまったりもします。
でも、清潔とか片づけるとか自分で料理するとかを、わりと大事にしている主人公たちは、結構大変な目にあいながらも、それを何とかクリアしていきます。
そこには超常的な事柄も絡んだりしますが(そういう超常的な要素がないと、これまた春樹さんらしくない)、主人公たちは迷いはすれども、根本的にぶれません。
もちろん小説なのですから、主人公の行動なんてある意味作家の胸一つでどうにでもなります。
春樹さんの主人公たちは、なにかというとスパゲッティを茹で、シャツにアイロンを当て、自身や部屋の清潔に気を配り、掃除をします。
「羊をめぐる冒険」ではワックスがけまでしちゃいます。
細部をしつこくならない程度にきちんと描く、というのは大事なことですよね。
ここから主人公や登場人物の人となりがある程度見えてきます。
春樹さんの小説の主人公たちは料理掃除家事全般を、わりとしっかりやることで「正気を保っている」のではないでしょうか?
家事で自分を整えることで、物語の中で起こる事件にも、何とか立ち向かっていけるのではないでしょうか?
少なくとも僕にはそういう風に読めます。
もし汚部屋に住む主人公だったら、150ページあたりでダメになってしまい、中途半端なところで物語が終わってしまいかねない。
主人公が最後まで物語における役割を完遂するためにも、ある程度のところで「自分を保って」いてもらわないといけません。
もちろん主人公が壊滅的にダメになっていく過程を描く、という小説もあります。面白ければそれはそれでいいのですが。
しかし、春樹さんの小説の主人公たちは、そういう意味では「壊滅」にまでは至りません。
大変な目には合うけれど、最終的にはなんとかなります。
ハッピーエンドかどうかはわからないけれど、何らかの希望は持てるラスト、とかね。
春樹さんの主人公たちは物語の最後まで「何とか正気を保つ」ために、家事全般手を抜かないのでしょう。
あるいはそういう主人公だからこそ、難問をクリアできるのかもしれません。
かくして春樹さんの小説の主人公たちは、自分の体の清潔を保ち、スパゲッティを茹で、アイロンをかけ、床にワックスをかける。
春樹さんが、自分のプライベートでどこまでそういうことをやっているのか、僕は深くは知りません。
料理はきっと相当できるのでしょうね。作家になる前はバーを経営なさっていたくらいですから。
アイロンがけについても、エッセイに書かれていたような記憶があります。
掃除に関しても、ああいう描写をできる、ということはある程度は自分でやっていらっしゃるのだと思います。
そうそう、主人公ではないけれど「海辺のカフカ」に出てくる愛すべき脇役「ホシノちゃん」はそういうこと苦手そうだなぁ。
スピンアウトとして、ホシノちゃんが主人公の小説を書いてくれないかなぁ。
家事全般苦手そうなホシノちゃん、どういう展開の小説になるのか楽しみです。
村上春樹さんの長編小説における、主人公の綺麗好き&家事マスト。
小説を深読みするのとはまた別な部分で、たくさんの示唆に富んでいるように思えます。
春樹小説の主人公たちは、家事をしっかりやることで自分のブレを少なくしている。
自分の整え上手。