久し振りの黒尾谷岳 

読み方が分からず 

父に聞いた事が昨日のことのように蘇ります 


 別荘地を通り過ぎ 

 突き当りの登山口の雰囲気は 

 昔と全く変わっていませんでした 


 当時の僕は山の知識もカメラの知識も一年生 

 無知が故のワクワク感だけが 

 僕を那須連山の中でも急登の続く 

 人気の少ないこのルートに向かわせていました 

 

登り始めてすぐに息が上がります 

こんな急登が続くのはお隣の白笹山と似ていますが 

 展望が開けない分 

 黒尾谷岳の方がきつく感じてしまいます 


山頂まで1時間半のルート 

予定ではコースタイムの半分くらいのつもりで登っていましたが 

あまりの辛さに予定の変更を余儀なくされました 


山頂直下で懐かしい岩棚に出会いました 

ここからの眺望は本当に素晴らしく 

遥か遠くの景色が薄靄に包まれてとても幻想的に思えました 


麓のゴルフコースのフェアウェイには白いカートが輝き 

ティイングエリアでティショットを待つカートも見る事ができます 


ここから約700ydほどの打ち下ろしでしょうか? 

普段ゴルフをしている僕からすれば 

まるでゴルフの神様にでもなったような 

そんな気持ちになってしまいそうです


黒尾谷岳の山頂を過ぎ 

ここから南月山までは未踏の縦走路となります 


一度標高を下げ

そこから南月山に向けて登り返すルート 


思いのほか脚力を消耗していて 

少し気持ちが沈みがちになりますが 


初めての景色と

若干傾斜が和らいだ登山道のお陰で 

暗くなりそうになった気持ちも

徐々に明らかになっていく南月山の山頂を照らす陽射しのように明るくなっていきました


見慣れた南月山の山頂に

笹に覆われた黒尾谷岳からの縦走路を経て到着したのは

想定していた時間よりも若干遅い時間でした


ここまでくると登山者の姿も多く

茶臼岳に続く見晴らしの良い縦走路は

どこの誰が見ても絶景と表する壮麗さでした


でも僕の目的はほぼ達成されていて

那須岳登山道の未踏破ルート開拓を成し遂げられた安堵感から

そこから先へ足を延ばすことはしませんでした


脚の具合も見ながら一部残雪や笹に覆われ見通しの悪い登山道を引き返します

相変わらず姿勢を崩すことが多いですが

それでも順調に黒尾谷岳に引き返していきます


時折吹いていた強い風も収まり

上着を脱いで快調に進んで行きます


途中

鈴の音が聞こえてきました


うら若き山乙女が一人

この静かな登山道を進んできました


彼女に道を譲り

軽く挨拶を交わした後に先を急ぎます


ここからは黒尾谷岳山頂へ登り返す急登


消耗著しい僕の脚を温存するためにも

慎重に登っていかなければなりません


黒尾谷岳山頂を無事通過し

比較的ゆっくりとしたペースで下山していきます


気になっていたのは

長年愛用しているウェストポーチのサイドポケットで

ここにスマホを収納している訳ですが

入り口のゴムが緩くなっているのと

僕のスマホが超小型なのが相まって

何となく落ちてしまわないかと心配していました


いつもなら

モバイルバッテリーからケーブルを繋いで

ワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながら歩いているので

二重の遺失管理をしている訳なのですが


この日はワイヤレスイヤホンを忘れてしまい

かつモバイルバッテリーからも充電されていない

フリーな状態でサイドポケットに収納されていたんです


これがこの後問題に発展していく訳なのですが・・


ともあれ

ペースは上がらないものの

登山口に向けて歩を進めていると

再び鈴の音が聞こえてきました


今度は30~40代の男女の登山者とすれ違いました


活発に意見交換しているのか

声が遠くまで届いていたのが印象的でした


彼らをやり過ごす時に

「ピストンされてきたのですか?」と問われ

一瞬どこまでのピストンを想定しているのか答えに迷いましたが

「南月山まで」とだけ言い残しその場を後にします


時間と体調が許せば

三本槍岳まで足を延ばしたかったところですが


無理をして怪我をしたりして

来月に控えるレースに差し障りが出てはいけないからと

自分を納得させながら先を急ぎます


思いのほか長く感じた下山を終え

登山口に着いたのは

登り始めてから約3時間後のことでした


昨日の20㎞走の疲れを癒すどころか

余計に疲労が溜まった感が否めませんが

とりあえず無事帰ってこれたことに

胸をなでおろした


そんなありふれた

山旅の記録です



※画像はイメージです